遊戯王夢
□カラスのリンゴは落としにくい
3ページ/8ページ
「ブレイブくん! 今犯人捕まったんだって、水着もD・ホイールも無事だよ!」
「は? つ、捕まったぁ!?」
てっきり目撃情報くらいかと思っていたのに、まさか犯人が捕まったとは流石の俺も目を丸くして驚く。
なんだよ、俺がとっ捕まえて優香の分までぶん殴ってやろうと企んでたのに……これじゃ、完全に優香のおかげになっちまった。
――色々突っ込む所はあるが、優香がセキュリティから聞いた話を要約するとこうなる。
犯人は生活に困り果て、たまたま近くにあった俺のD・ホイールを使い犯行に及んだそうだ。
優香の水着(の入ったカバン)を引ったくり逃走していたらしいが、一般人が俺が乗る時のようなスピードを出せるはずが無い。
すぐに優香から連絡受けたセキュリティに追いつかれ、呆気なく身柄を拘束されたという。
と、自分で説明していても馬鹿馬鹿しい話だが、んな馬鹿野郎にパクられたのも俺だし何も言えないのが現実だ。
ま、幸いハラルドやドラガンにバレなかっただけマシか。
それに自分の水着が見つかって喜んでる優香を見てると、なんだか俺までつられて頬が緩んでいく。
「水着も無事で良かったな、優香」
「うん、ブレイブくんのD・ホイールも見つかって本当に良かった! D・ホイールと水着は私の家に届けてくれるみたいだから、ブレイブくんも一緒に行こ!」
「いや、俺はセキュリティまで取りに行――」
「それに落ちたリンゴも弁償しなきゃ」
リンゴ?
申し訳無さそうに地面に散らばったリンゴを見る優香に、あぁと俺は思い出したように頷く。
そういや、さっきぶつかった拍子でリンゴが全部落ちたんだっけな。
優香や犯人の事ですっかり忘れていたが、別に後で俺が買いに行けば問題無い話だ。
困った様子の優香を安心させるように、彼女の頭にそっと手を乗せて撫でた。
「弁償とか気にすんな。それよりさっさと水着返してもらって来い」
「き、気にするよ! ブレイブくんは私と一緒に居たくないの?」
「うっ……」
上目遣いで俺の顔を伺う優香に、柄にも無くドキっとして手が止まる。
おいおい、そりゃー反則だろ……こんな可愛い子に見つめられて「一緒に居たくないの?」なんて言われりゃ、男なら誰でも落ちるだろ!
しまいには腕まで掴まれて、至近距離からじーっと優香の視線が当たる。
もうこうなれば観念してサレンダーする他なく、渋々俺は優香の家に行く事になった。
もちろん隣の優香は俺の気持ちなど知らずに、ウキウキしてやがる。
どうなってもしらねぇからな、俺は……。