ワールドブレイク
□ワールドブレイク 8
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ミーン、ミーン……
窓からセミの鳴き声が次々と聞こえてくる。
まだ六月の中旬だというのに、外は蒸し暑く、滅多につけないクーラーも今日はフル稼働中だ。
今年の夏は特に猛暑になるそうで、きっと去年より電気代は増すだろう。
日曜日の朝、一人家計簿をつけながら、はあと溜息をつく。
が、今私に突き付けられた問題は電気代どころではない。
視線を横にやり、机の上に置かれたデッキと昨日鬼柳が(不本意だけど)私の出世払いで買った箱が目に入った。
……いよいよ明後日には自分のプライドを賭け、ジャックとデュエルする事になる。
昨日一日で、ある程度ルールは把握したとはいえ、まだまだ実践不足にも程がある。
とにかく今日は昨日光平くんから聞いたテストプレイ?をして、ちゃんとモンスターの効果とかデッキを把握しなきゃ――!
「……とりあえず勉強してから考えよう。昨日はあんまり出来なかったし」
昨日は朝から昼までデュエル尽くしだった為、私とした事が勉強をする時間がほとんど取れなかった。
しかし学級委員兼、成績上位の生徒として勉強を疎かにする事も出来ない。
これ以上、勉強でも鬼柳に負ける訳にもいかないし……今度こそ覚悟しておきなさいよ!
鬼柳に対して、メラメラと闘志を湧き立て予習用ノートを取り出すのであった――。
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「ふー、これだけやれば大丈夫ね……って、もう一時!?」
今週分の予習や復習が終わり、時計を見れば時刻は午後一時頃をさしていた。
納得がいくまで勉強に集中していたから、こんなに時間が経っていたのに気付かなかった。
十二時くらいからご飯を食べようと考えてたのに……勉強って一度専念するとなかなか止められないのよね。
早く昼ご飯を作ろう、と辺りの勉強用具を片付け始めた――その時。
―――ピンポーン
突如、玄関のチャイム音が室内に鳴り響いた。
昨日の鬼柳の件もあるので一瞬出るのを躊躇ったけど、もし万が一(考えたくもないが)鬼柳だったら居留守を使えばいいか……今日は外も暑いし、流石の鬼柳もすぐに諦めるかもしれない。
もちろん鬼柳でない事を祈りつつ、そっとインターホンの液晶画面を覗く。
すると液晶画面に映っていた人物はダサいバンダナを巻いた鬼柳、ではなく―――意外な二人組だった。