二万打企画

□聖なる焔と魔の戯れ
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主の命で日々働く一見黒い犬とも魔物とも見えるセンチュリオン・テネブラエ。

日課として主の様子を見に来たテネブラエは鮮やかな赤を見付けた。
明らかに人間である少年は主が一時的に預かっている人間の子供だ。
テネブラエは迷わず子供に近付いた。


「どうしたのですか?こんな所でボーッとして」


声を掛けられた子供、ルークは背後から声を掛けられたこともあって驚きで身体を強張らせた。
恐る恐るといった様子で振り返りテネブラエの姿を見ると安堵で表情を綻ばせ、笑みを浮かべる。


「てねぶらえ!」


ルークは小言で叫ぶとテネブラエの尻尾を掴み自分の後ろへと引っ張った。


「いきなり何をするのですか!」
「しーっ!」


突然の行動に抗議するテネブラエ。
その抗議の声にルークが静かにするように言うと再び木に身体を密着させ隠れるような動作をする。
そんなルークの後ろから顔を出したテネブラエは見慣れた二人組の姿を目にし、首を傾げた。


「エミル様とラタトスク様がどうかしましたか?」


ラタトスクを背もたれに地べたに座るエミル。
背もたれにされているラタトスクは背を密着させるエミルを抱え込むように座っていた。
その二人から隠れるように木の後ろにいるルーク。
何故そのようなことをしているのかがテネブラエには分からなかった。


「……なかよくなりたい」
「ラタトスク様とですか?ラタトスク様と仲良くなるのは少々骨が折れますねぇ」
「ちがう」
「なら、エミル様ですか?エミル様が誰かを嫌うなんて珍しい」
「ちがう!おれ、えみるとともだちだもん!」


ムッと頬を膨らませて言った言葉にテネブラエはおやと首を傾げた。
あの二人でなければどうしてこんな場所に隠れる必要があるのか。
少し考えてみるが、誰と仲良くしたいのか分からなかった。


「なら、誰ですか?」


そこまで深くない内容だったためすぐに考えることを放棄し、ルークに訪ねる。
ルークはにっこりと笑った。


「まもの!」


まさかの答えに目を瞬かせるテネブラエ。
主に視線を向ければ確かに主を守るため傍に控えさせている魔物達の姿がある。
最も今の主は完全に力を取り戻しているため護衛など邪魔なだけかもしれないが。


「魔物ですか?何でまた……」
「おれもえみるやらたとすくみたいになかよくなりたい!」


仲良く。
その言葉に思わず主へと視線を向ける。
エミルは確かに魔物達と仲が良いだろう。
何せ魔物を友達と称するほどだ。
しかし、ラタトスクはどうだろうか。


「(ラタトスク様が魔物と仲良くやっている姿は……想像出来ませんね)」


扱き使っている姿を仲が良いとすれば仲が良いのだろうが、使役することと仲が良いということとは違う気がする。
そこまで考えテネブラエは良い事、もとい面白そうな事が思い浮かんだ。


「なら、良い事を教えてあげましょう」


語尾に音符か星があるような口調で言われた言葉に目を輝かせるルーク。
明らかに何かを企んでいるのは明確なのだが、それを指摘出来る人影は近くには何処にもなかった。
 
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