捧げ物

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その異変に恐らく新しい世界樹の精霊、マーテルよりも早くラタトスクは気が付いた。
ラタトスクがまず行ったことはその異変で生じたマナの変化を正すようにセンチュリオンに命ずること。
また異変について正確な情報を得ること。
異変について大まかな情報を入手した時点で嫌な予感がしていた。
そして、その予感は見事に的中した。





「おぉっ!これは凄い熱気ですね。遠くからでも伝わります」
「…………」
「いやはや、どこの世界も戦闘狂がいるのですね」
「………………」
「もしくは闘う姿を見たい物好きでしょうか。いやー、良い趣味をしています」
「………………おい」

金髪の少年の姿を模した精霊、ラタトスクは斜め下を見た。
ヒトには見えないようにしている生物のような姿を模したモノがラタトスクを見上げる。

「どうかなさいましたか?」
「何でお前がいる?」

先程から好き勝手喋る連れてきた覚えのない黒い配下を睨む。
主に睨まれた黒い魔物のような生き物、テネブラエは笑みを浮かべたままラタトスクを見た。

「ラタトスク様のお手伝いをするようにエミル様に頼まれました」
「…………ちっ」

舌打ちをするラタトスク。
マルタは勿論の事、何だかんだでエミルにも甘いラタトスクは大人しく引き下がる。
もしも勝手に着いてきたと言えば確実に怒鳴り散らすだろう。
勿論それは「もしも」の話であり、テネブラエはエミルのお願いという名の命令で此処にいる。

「それで?」
「この街にいるようですが何処にいるかまでは分かりません」

ダメ元で聞いたものの予想通りの答えに舌打ちをするラタトスク。

「面倒臭ぇ……」
「恩を仇で返しますか?」

テネブラエを睨むラタトスク。
睨まれたテネブラエは怯む様子も見せずに隣に控えている。
一番の腹心であるものの時折この僕はラタトスクを苛立たせた。

「……やることはやる」

ラタトスクは雑踏の中へと足を進めた。
 
 
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