寓話

□星に願いを
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「起きたと思えばいきなり騒がしい人ですね…」

ワタシ以外の声に気がついたのか、先ほどまで台所に居たはずの弟子も部屋に来ていた。いかにも鬱陶しいと言いたげな弟子。眉間の皺が幾らか割り増しになっている。あそこまで深く刻まれた皺は痕にならないのだろうかと疑問になる。
明らかに不機嫌全開な弟子とは裏腹に、不思議な少年は満面の笑みで様子を眺めている。それが気に入らないらしく、更に苛立ちを募らせているようだ。

「何が面白いんですか…?」

ドスを聞かせて明らかに見下すが、全く少年には通じていないらしく本当に嬉しそうにニコニコと笑っている

「面白いよー。だってマツオともソラともお話ができるんだもん」

思わず耳を疑った。それは弟子も同じだったらしい。信じられないものを見る目で、思わず少年を見つめる。少年は相変わらず満面の笑みを浮かべている
意を決し、恐る恐る言葉を紡ぐ。

「……なんで、ワタシ達の名前を知っているの?君は誰?」

「ボクはマーフィーだよ!ぬいぐるみの!」
「信じられませんね。あの汚物が人間になるだなんて」
「本当だよ!ほら!!」

瞬間、ぽふんっと軽い音が鳴る。同時に少年が煙のようなモノに包まれ…煙が消えたと思うと先程まで少年が居た場所には、ワタシの親友が横たわっていた。

鳩が豆鉄砲を食らうとは、まさにこの状況なのだろう。
ワタシも弟子も目の当たりにした光景を俄かに信じられず、横たわる親友を見つめていた。

「芭蕉さん、あのぬいぐるみは何処で手に入れたものですか?」

暫く黙っていた弟子が、静かに口を開いた。何故それを聞かれるのかが判らなかったが、答えなかった場合自分が酷い目に合うのは目に見えている。
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