企画

□イチョウ並木
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季節は秋。

少し寒くなってきて、肌にあたる冷たい風が益々冬に近づいていることを告げる。



グラウンドの木陰で暇を潰す。

今は、彼氏の部活が終わるのを待っている。



彼氏は先輩でテニス部。

後輩の私なんかが近づいてみても先輩に負けるのが落ち。



理由としては、テニス部ファンの先輩はとても怖い。できることなら関わりたくないとも思ってしまう。



「葵?」

「あ、先輩」

「他人行儀に呼ぶの止めやって言うたやろ」

「・・・光先輩」

「どーやっても先輩は取れへんの?」

「無理です」



私が呼びなおしてもやはり少し不服そう。

でも"先輩"だけではなく名前が入ると少し嬉しそうに笑う。

光先輩のことを無愛想なんて言った人は誰だ。全く持って喜怒哀楽がはっきりしている人じゃないか!

頭の中の葛藤で忙しなくしていたら光先輩から声がかかる



「・・・帰ろか」



光先輩の最後の一言で二人して帰路につく。途中の道で、目の前一杯にイチョウが広がる。



「光先輩! イチョウが一杯ですよ」

「そら、イチョウの木やしな」

「ムードないこと言わないでください」



むー、負けてたまるもんか!

光先輩は、いつも余裕で時々悲しくなる。

光先輩の顔に近付いて一言と一行動。



「光」

「え」



いつもは、余裕たっぷりの光先輩の顔が真っ赤に染まるのだった。



イチョウ並木
(不意打ちの名前とキスはあかんやろ)(そんな俺とは裏腹に)

(イチョウに囲まれてキスするのも良くないですか?)(少し頬を染めてキミはそう言ったんだ)




20110412
神楽 葵


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