SS部屋

□Hの前に
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「もしもしー?」
「は、いッ!ひじかた!」
「お、よかった。俺だけどさ、今日の晩だけど、」
「ぎん、あのなッ」
「ん?」
「ちょっと待って」

ぼふぅという息らしき音が混じった。

「今手が離せない」

妙だ。
だって、なんか、吐息が色っぽい。それに呼び方が『銀』だなんて。ある例外の時を除いて呼んでもらえない名だ。
──そう、感極まった時の。

「あ、あ、もう出そう」
「んん?」
「一回切っ──!」
「オイ、土方?」
「ぁ、あー」




「いっちゃった……」

たまらずこぼれたと言わんばかりの吐息混じりの声に、銀時は下腹がぐんと重たくなるのを感じた。
まったくもって、けしからん。なんだかわからんが、けしからん。

詳しい事情はわからないが、土方は息が上がるようなナニごとかをしていたわけだ。というか、みなまで言わせないでほしい。男がひとりですることったら、ひとつしかないでしょうが。

「くそ、あともうちょいだったのに」

スピーカーごしに届くのは、呼吸を大いに乱した土方の熱っぽい吐息と、ぐすんという泣きの入った声。
直接目にしているわけではないからか、耳から入ってくるどんな些細な情報もが余計に興奮を煽る。きっと今頃、切れ長だった目は潤み、目元は赤らんでいるにちがいない。
よくアレのあとは全力疾走したのと同じに喩えられるが、まさに今、自分の居ないところで、土方はひとりで一体どんな恥態を演じているのかと、いよいよ銀時のボルテージは最高潮に達した。鼻の奥がツンとするのは恐らく気のせいではないだろう。

「イケたんならいいじゃねぇか?そりゃ確かに銀さんの居ないとこでひとりで、ってのはいただけねーけど」
「はっ!ばかやろ!よくねーよ!!お前に会いに行くために必要だったってのによ!!」
「ちょ、土方?」
そんなことしてたの?

銀時の動揺も知らず、土方はなおも声をあらげた。

「どーすんだよ!一時間にほぼ一本しか出ないのに。あとまたもう一時間待たなきゃなんねーだろ」

一時間に一本。
銀時はぱちくりとまばたきした。それは二人で、それももうやだヤメロと言うのも聞かず自分がねちっこくやった場合の話ではないのか。お前、そんな淡白な奴だったか。

「いやいやそんなことねぇよ?がんばれ土方お前ならやれるはずだ土方、むしろ俺が今すぐ飛んで行って手伝ってヤる土方ひとりじゃいろいろもったいないからなハァハァハァハァ」
「……………オイ…?」
「まだ俺たちゃ若いんだからちょっとぐらい薄くなったってどんどんイケるっ─「てめえは何をぬかしとんのじゃこの脳内ぬるぬる腐れ天パァァァ!!」



…………………………
H(エイチ)の前に=hassya/発車の前に。
G()のことじゃないよ。
バスでも電車でも原作でも現代版でも可。ぎんときくんは年中ムラムラします

2012.7.21

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