SS部屋

□なにをいうのです
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「…ぶっ。ナニつけてんだオメー?」
「『ナニつけてんだ?』じゃねぇよォォォ!!ついてるはずのねぇもんがついてるから焦ってんじゃねーかァァ!朝起きたらこうなってたんだよっ。どうすんのコレ。何がどうなってんのコレ」
「見た通りだろ。ナニがドライバーになってんじゃねーか。しかも普段使わないやつ」
「オイィィっ!?恋人のアナログスティックがえらいことになってんのになんでんな冷静なんだテメーは!?これじゃ…こんなんじゃもうお前とエンジョイ出来ねぇじゃねーか。しかもさりげに使わないやつとか言うなよな!おま、言っとくけど今朝方まで大活躍だったんだかんな、コレぇ!」

叫びながら、いつもの立派で安心する感触とは違い金属の冷たい無機質な表面を握り、その切っ先を相手に向けた。余談だが、どういうわけか金属…すなわち無機物になっても、きちんと『握られている』という感覚があった。自分の慌て様とは対照的に、土方はいたって冷静に俺と、かつて俺の息子だったものとを見比べた。

「…まぁよくわかんねーが、良かったじゃねぇか。使っても使わなくても大差ねえよ。お役御免ってことで」

そう言って土方はぽん、と俺の肩に手を置いた。

「土方くん、それ本気で言ってる…?」

ひくり、頬をひきつらせ地を這うような声で問うた俺に、無情にも愛しい愛しいはずの恋人は頷いた。彼は背を向けると、そのままどこからともなく取り出した煙草に火を点ける。振り向いた土方は一分の隙もなく隊服を身に付け、瞳孔をガン開きにしながら、言った。

「考えてもみろよ、テメーと俺が付き合うなんて地球がひっくり返ったってあり得ねぇじゃねーか。夢だよ、夢」

耳を疑うような言葉がだがしかし土方の唇から発せられ、自分でもわかるくらいに俺の顔は青ざめていた。


3へつづく.
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