おくりもの
□早起きを怠らずラジオ体操のスタンプは自分で押すべし
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かぶき町の通りを無我夢中で走り抜け、夕日の沈む土手までたどり着いた時初めて、土方は持参した酒を置き去りにしてしまったことに気づいた。
銀時は自分の来訪を知っただろう。
もうどうしようもない。やはり女がいいに決まっている。当然だ。こうなるのは自然の摂理だ。やはり今まで無理をさせていたのか。同情?相性が良かったから?なんだったんだ、俺たちは。なんて馬鹿なんだ、俺は。
「っ、」
ぐるぐるぐるぐる。
土方は堪え切れなかった嗚咽を手の甲を押し当てることで誤魔化した。ずしりと重くなった体を引きずり、それでもなんとか普段通りを装い屯所へと戻った。
***
余計なことを考えなくて良いように──。
その一心で黙々と仕事を処理すること一週間。探せば仕事はいくらでもあるもので、土方が市中見回りから自分を外し、デスクワークに専念する日々が続いた。
沖田などは不満そうな顔こそするものの、何を言うでもなく去っていった。
書類仕事の合間、懐からタバコを取り出そうとして土方は箱が軽いのにはたと気づいた。
「ちっ、空かよ…。オイ山崎…」
言いかけて、最近動きのあった攘夷グループの密偵を命じていたことを思い出す。間の悪いことに他に頼める人間はいない。
眉間のシワをさらに深く刻み、土方は静かに立ち上がった。
銀時に会うのが恐ろしくて外に出なかったというのに。かといってタバコなしで生活できるとも思えず、しぶしぶ自販機のあるところまで向かった。