おくりもの

□早起きを怠らずラジオ体操のスタンプは自分で押すべし
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その日、土方は翌日が非番ということもあり、万事屋に来ていた。
玄関に入り、勝手知ったるなんとやらでそのまま上がり込む。足元に目をやると、いつも見慣れた靴は見当たらなかった。

「…ガキどもは居ねぇのか」

それは好都合だ。
いつもなら、土方は神楽や新八と鉢合わせた時のために酒の呑み比べをしに来た体(てい)でやってくる。

もっとも、酒にそれほど強くない土方である。前後不覚になって朝を迎える、などということのないようにほとんど口をつけることはない。銀時は銀時で、呑み過ぎたら勃たねえなどと無粋な理由をつけて、結局二人とも瓶を空けることがないのだ。
おかげで銀時の寝室には大小さまざまな酒瓶がこっそり隠されているのだが、幸いにもそうしたもろもろの事実は従業員たちには知られていない。

今日もそのために一升(いっしょう)瓶を手にしていた土方は、日本酒の入ったビニール袋を側に置くと、脱いだ靴を揃えて中へと入った。

応接室──恐らく恋人がいつものようにぐうたらしているであろう部屋まで来た時、土方は異変に気づいた。戸の向こう、室内の空気が何か違う。あえていうなら、絡み付くような。
戸口に立ち尽くしたまま、土方は中の様子を伺った。

「んっ…ふ、もっ…!」

女と思われる甲高い声。
そして耳を塞ぎたくなるような水音。

「は、かわい…」

今のが誰かなんて考えるまでもなく。土方は逃げるようにしてその場を後にした。
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