ぎんたま!
□瞬間、目覚めて
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※高校生パロで家族捏造。
試験直前で部活のなくなった土曜日。
総悟の家で勉強を教える、だけのつもりだった。それがどういうわけか、帰ろうとしたところを引き留められ。気づけば総悟の両親と向かい合って食卓についていた。
ずっと視線を一身に感じる。
こういう雰囲気はどうも落ち着かない。まるで見合いみたいだ、なんて浮かんだ考えを首を振って打ち消す。
不意に総悟のお袋さんが口を開いた。
総悟が家に連れてきた友達は土方くんが初めてよ。
人見知りが激しい子だから心配してたんだけど、いつも土方くんの話を嬉しそうにしててね。
はあ、とまぬけな返事を返しつつ、俺はあまりに意外な内容に総悟に目をやった。
………。
一瞬目があったけれど、無言でふいと目を逸らされた。なんだかこちらまで調子が狂う。
親父さんは隣のお袋さんに缶ビールを取って来てくれと声をかけながら、さもなんでもないことのように切り出した。
土方くんは学年首位の成績なんだってね。
総悟はこちらがいくら勉強しろと言っても聞かないんだが、きみが勉強を見てくれて本当に助かったよ。
いえ、俺のほうこそいつもこい、…総悟にいろいろ教えてもらってます。剣道なんか世話になりっぱなしで…。あ!朝練の一番乗りはいつも総悟なんですよ。
今日なんか朝から早起きして部屋にこもって勉強してたよ。
きみが来る前に慌てて片付けてたみたいだが。
…そうなのか?
俺が尋ねても総悟は味噌汁のお椀をすすったままで返事はおろか表情もわからない。
それを見て親父さんは微笑むと、
うんうん。
きみが未来の嫁とはうれしいよ。こんなおしとやかなべっぴんさん、
「うわあァァァ!!!!!!」
そう叫んで起き上がれば確かにそこは見慣れた自室の天井で。
「夢、か…」
動揺しつつ案外満更でもない自分に一番驚く。…ん、満更でもないってなんだ。アレか。俺にそういう願望でもあるってのか。そもそも男なのになんで嫁。なんて夢。
「いやいやそれはないから」
「何がないんですか」
「だから俺の願ぼ…、」
言いかけて誰かと会話が成立していることに気づく。今の声は。
「そっ!…総悟か。何ヒトの部屋に勝手に入って来てんだ」
悲鳴をなんとか飲み込んで尋ねる。どうせ、いつもの迎えの時間を過ぎても降りてこない俺に焦れた総悟を、母さんが部屋に通しでもしたんだろう。息子のプライベートはどうなっているのかと頭を抱えたくなってきた。よりによってこのタイミング。
「土方さん、今日は帰りにちょっと行きたいところがあるんでさぁ」
構いやせんかと俺の質問には答えず総悟が話す。こいつが人にわざわざ伺いをたてるなんてと怒りよりも驚きが勝り、無意識のうちに言葉が滑り出ていた。
「おう。珍しいな、どこ行きたいんだ?」
軽い調子で聞いた俺にしかし総悟は上目遣いで、言った。
「俺ん家でさぁ」
「…のァァァ!?」
「アレ?どうかしやしたかい土方コノヤロー」
瞬間、目覚めて
…………………………
始まりの予感がする。
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