ぎんたま!

□思春期
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※ちょっと下品





いつもと変わらない朝の食堂風景。いや、ひとつだけ違うのはいつもなら騒がしいはずの真撰組副長と一番隊隊長の二人が隣に並んで黙々と食事を採っていることだった。

「…いい加減気づきなせぇ、土方さん」
「あ?何のことだ」

突然話を振られて土方は卵焼きを持つ手を留めた。顔を上げて隣でサンマをつつく沖田を見やる。

「最近、アンタ良く眠れてるでしょう」

土方はそういえば、と頷いた。

「俺、裏庭の松に釘で打ちつけてたアンタの写真抜いたんでさぁ」
「…そうか。もうするなよ」

ようやっと悪趣味なイヤガラセをやめる程度には成長したかと土方が安堵の息を吐いたのもつかの間、沖田は隕石級の爆弾を投下した。

「それからはアンタの写真で抜いてやす」

ぶーっっっ!!

味噌汁を飲んでいた土方は向かいでたくあんをぽりぽりしていた山崎の顔目掛けて盛大に吹き出した。

「な、な、なななな…!」
「どうしたんでぃ土方コノヤロー。7が3つそろったら当たりですぜ?」

その場に何がだよ!とツッコむ勇気があるものなどおらず、唯一のツッコミである土方はぱくぱくと口を動かすのみ。静まりかえった食堂で、構わず沖田は一方的に話を続ける。

「普段だって、アンタのことばっかり考えてまさぁ。それもこれも、アンタがそんなに色っぽいからいけないんでぃ。純情な青少年たぶらかしちゃあいけねぇや」
「俺がいつたぶらかしたァァァァ!!」

半ばヤケクソ気味に叫ぶ土方とは対照的に、沖田は右手の指を使ってひいふうみい、と数え出した。

「見回り中に俺が耳元で話しかけたら肩震わせて反応するし。タバコくわえる時無意識か知りやせんが唇に何度も触ってるし。マヨかけて飯食ってる時恍惚とした表情だし。あと風呂あがりで上気した顔ってだけでもやばいのに着流しだけ羽織って屯所の中うろうろされた日にゃあうなじやなんかがちらちら目に入ってこっちは気が気じゃなくなるんでぃ。それに朝部屋襲撃しに行ったらはだけた格好のまま寝言で俺の名「総悟」

沖田はぴたりと口を閉じた。

「へい。なんです土方さん」
「っテメ!ちょっと顔貸せや」

恐らく怒りだけではないだろう赤く染まった顔で、土方は先に席を立った。律儀に山崎に片付けを頼むあたり、彼らしい。土方のあとに続いて、沖田も食堂を後にする。


騒ぎの中心にいた二人が去ると、食堂は再びしん、と静まりかえった。あたりを重苦しい沈黙が包む。

山崎の前にはすっかり冷めてしまった二人分の朝食。未だ茫然としていた彼に、見かねた隊士の一人がティッシュ箱を手渡した。山崎はようやっと顔の味噌汁を拭う。



不意にあ、とどこかから声が上がった。

「俺、副長に判を貰わなきゃいけない書類があったんだった…」

誰かが呟いた一言に、全員がため息をついたのだった。


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