ぎんたま!

□ポニーテールに天ちゅう
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近藤さんの号令一下、屋上の隊士、浪士の鎮圧及び無効力化が済んだ。あとに立っている者は自分と──どういうわけかこの場に参加している、名実ともに、恋人の、男。
本当、なんでコイツは居てほしい時に必ず現れるのか。ひとの気持ち読みやがって、エスパーか。坂田さんじゃなくて伊藤さんか。
まったくもって憎たらしい。顔を見て安心しただなんて絶対言わないと決めた。

「土方…顔中血だらけだな」
「ん…」

髪に手を入れ、頬をするりと撫でられる。

「消毒」

銀時の顔が近づいて、ふわり唇が離れていったかと思うと、今度は何かに顔を拭われた。

「なに、…スカーフ?」
「ああ。そいつからもらった」

そいつ、と背中越しに指差す先を見れば、先ほどの乱闘騒ぎで伸びている見廻組の幹部服の男。

「……使えるな」
「ん?何々?」

スッと銀時の横を通り抜け名も知らぬ男に近づくと、
「借りるぞ」
隊服の上下を拝借する。少し離れたところで血のついたベストとワイシャツを脱ぎ捨てると、後ろからヒュー、と口笛が聞こえた。
「何始めたかと思ったらストリップですかコノヤロー」
「なわけねぇだろ。こっち見んな」

同じ高さにある頭を掴むとグリっと反対方向に向けさせる。ここで邪魔をする気はないのか、珍しく素直に従った銀時は背を向けたまま胡座を掻いた。

「─見張っててやっから早く着替えろよ。…続きは後でな」
「…っ、」
続き、が引っ掛かったもののしばし静かな時間が流れる。
簡単な応急処置で止血を済ませ、脱ぎ捨てたワイシャツを再度着込む。さすがに直に他人の着ていたものまで身につける気はない。
「あ、」
新たに白いベストの上にジャケットを羽織ったところではたと気づく。

「どうした?」
「さっきの。俺の血拭っちまったからスカーフが使えねぇ」
「あ?ああ…それならまあ、しょうがねえなぁ」

銀時はおもむろに立ち上がると、懐から取り出したスカーフで恭(うやうや)しく俺の首を包んだ。いやおかしいだろ。

「なんでオメーがまた持ってんだよ」
「テメーが下で落っことしてったヤツを拾ったんだよ」
こないだうちにマヨボロ忘れてったろ、あれと一緒に土方コレクションに加えようと思って。

ぽつりとこぼす銀時にどういうつもりかと目だけで問うと。

「そりゃお前、しばらく会えねえ時の実用にだな…」
「ド阿呆」

聞いた俺がばかだった。

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