ぎんたま!

□どっか、いりょく
1ページ/1ページ




周りを見渡せばカップルばかり。
けして公にはできないものの、自分たちもクリスマスを過ごすカップルのひとつなのだと銀八は内心浮かれていた。

銀八の勤める銀魂高校では、現在講習週間の真っ最中。成績優秀な土方はすでに推薦が決まっているので問題ない。
一方、こう見えても現役高校教諭である銀八はやれ小論文の添削だ、センター対策だ、と多忙なスケジュールに追われ、恋人である土方にこうして会うのは実に5日ぶりであった。そんな中どうにかこうにかクリスマスデートにこぎつけたわけである。

「先生…さっきからずっとこっち見てるの、気づいてないと思ってました?」
「え…」
「俺、ちゃんとわかってます」

そこで土方は言葉を切る。
うつむき目線を合わせない土方の表情は前髪に隠れ定かではないが、身じろぎした拍子にわずかに染まった頬が見えた。と、銀八が思ったと同時に勢いよく土方は顔を上げた。

「好きですよね?」
「なに、」
「好きなら味見してみませんか?俺の…初めて…」

ごくり。いやに唾を飲み込む音が大きく聞こえる。

─好き。味見して。俺の初めて。

言葉をゆっくり反芻して銀八は穴が空くほど土方を凝視した。

そんな、まさか。
俺にとびきりのクリスマスプレゼントをくれるというのか。もじもじ顔赤らめちゃってるし。ウン、これはそういうことでいいんだよな。……この子はほんともおォォォ!神様ありがとう!サンタさんありがとう!俺、生きててよかったァァァ!!

内心盛り上がった銀八はそんな邪な思いなど微塵も顔に出さず、器用にテーブルの下でガッツポーズをした。





「…のキャビア」

ガッシャーン!

「お客様!?」
「先生!?」

食べかけの食器類めがけて顔からダイブしていった職業・国語教師の男は、スープ皿にはまったまま、しばらく顔を上げられそうになかったそうな。



おわってみる

読解力。
教訓・話は最後まで聞きましょう。主語も適切に補いましょう。ここ、テストに出ます。


……………………
悶々シリーズで八土。このシリーズで原作設定以外は初めてですね。どうしても土方さんに敬語で言って欲しかったので、土方くんになってもらいました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ