ぎんたま!

□わかりやすい男
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「死ね土方」

「総、悟」

「総悟。こっち向け」
「…何ぶすくれてんだ」
「別に。普段通りでさぁ。とうとう目までおかしくなったんですかぃ土方コノヤロー。せいぜいアンタは花火も見えねぇここで自宅警備員やってなせぇ。あーあ。止めるうるせえ奴がいなくて清々すらぁ」
「なあ」
「なんですか自宅警備員」
「みやげ、頼むな。いちご飴がいい」
「……わかりやした。綺麗さっぱり忘れときやす」
「オイ」
「山崎ぃ、もたもたしてるとどっかのバカみたいに置いてくぜ」

それだけ言うと沖田はさっさと廊下を歩いていってしまう。

「…山崎」
「はいよ」
「総悟のバカと近藤さんのこと頼むな。あと俺がいないからってちょっと息抜きするのはいいが、隊士連中が羽目を外しすぎないように目を光らせとけ」

祭り騒ぎに乗じようとするテロ犯がいないとも限らねぇ。
そう早口で告げる上司も、今ここにはいない、そしておそらくは門の前で自分を待っていてくれるだろうもう一人の上司も、言動と中身が一致しないのは一緒だなと山崎は思った。

「…任せてください」


***


「遅ぇぞザキのくせに」

開口一番、やはり待っていてくれたのだと嬉しくなった山崎に沖田が向けた言葉が、それだった。

「すみません隊長…。あれ、ほかのみんなは…?」

見渡せど、辺りには沖田以外の姿は見当たらない。

「ほかのやつらはもう行った。ったく、運転手がいなきゃ行こうにも行けねえじゃねぇか。ほら、早くしろよアッシー」

寄りかかっていた門から身体を離すと、沖田は先にパトカーの助手席についた。山崎も慌てて乗り込む。発進させた車のハンドルを握りながら山崎が隣を盗み見ると、沖田は黙って窓の向こう、どこか遠くを見つめていた。
上司が何を考えているのか、山崎には少しわかった気がした。





構って、なんて口を滑らせるぐらいなら死んでやる。




…………………
せっかくお祭りで神社境内の警備になったのに土方だけ屯所待機でいじける沖田。
すかさずお子さま花火セットをコンビニで買って帰るいい子山崎。もちろんすぐに上司たちに渡します



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