ぎんたま!

□悪くない日
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本人にしても珍しく真面目に1人見回りをしていたところだった。
「おいサド男!おめでとう!!」

笑顔とともに大きな声で呼ばれ、沖田は目を丸くする。

返す言葉も浮かばず黙って立ち尽くしていると、桃色の頭をした少女はニイ、と年相応の笑みを濃くした。

「残念だったアルナ。天の川が見れなくて」

それだけを言い残すと、会話らしい会話もせず少女は傘片手に走り去っていった。

「…なんでいありゃあ。調子狂うわ」

ぶっきらぼうに言い放った沖田がどんな顔をしていたのか。知らぬは当人ばかりだった。



***



その後ぶらり立ち寄った甘味処で、沖田はこちらに気付いて手を降る見慣れた銀髪の男と出会った。

「おー総一郎くん」
「総悟です旦那」
「ちょうどよかった。会えたらいいなと思ってたところだったんだよね銀さん」
「総悟くん」
「へっ!?」
「これ、やるよ。俺からのサービス。ま、ドSのよしみってことで」

名を正しく呼ばれた上に団子を差し出され、沖田は思わずすっとんきょうな声をあげる。

「そのよしみでまたツケてこうって腹じゃないだろうね銀さん?」

沖田が声のした方へ首を向ければ、そこには暖簾(のれん)をくぐり追加の団子皿を手にした店の主人がいた。困るよ〜、うちも商売やってんだから。言葉とは裏腹に、その表情は柔らかい。

「へいお待ち」

そう言った店主は銀時ではなく沖田の方を向いていて。

「え、でも…」

「沖田さん今日が誕生日なんだって?銀さんがさっき話しててねぇ。
──よくウチに来てくれるだろ。これは祝いだと思って受け取ってくんな」

不器用なウインクまでもらって否とは言えず、沖田は黙って銀時の隣に腰掛けた。その団子皿の上に、先ほどから手にしていた団子を銀時が載せる。立派な誕生日ケーキならぬ誕生日団子の完成だ。

「いいもんだろ。生まれた日ってのも」
「へい。悪かねぇです。これだと旦那の誕生日にはでっかいホールケーキ用意しなきゃ駄目ですかね」

もっちゃもっちゃと団子を頬張る沖田の姿は傍目にはいつもとそう変わらない。

「おー。楽しみに待ってるぜ総一郎くん」
「ほうほへふ」

しっかり訂正してくる声を聞いて銀時は笑った。一度伸びをすると懐から出した小銭を腰掛けの上に置く。

「じゃあまたな。ゴリラやマヨネーズたちにもしっかり祝ってもらえよー」

ラストスパートとばかりに団子を頬張っていたために、沖田は返事のかわりにコクリと頷いた。ヒラヒラと背中越しに手を振る後ろ姿に、ひっそりと呟く。

「ありがとうございます、旦那」


「あー!!」

丁度食べ終わった皿を下げにきたはずの売り子がそばで大きな声をあげた。何事かと振り向けば、手には先ほど銀時が払ったはずの団子代。……のはずだが、金額を見れば少し足りない。
いやー銀さんにまたしてやられたよ。ツケ代分今度来た時働いてもらおうかね。店主の呟きに、割烹(かっぽう)着を身に付け団子を器用に串に刺していく男の姿を想像して、沖田は吹き出した。

「ブッ。あの人らしいや。…仮にも俺が警察だってこと覚えてんのかねぃ」

金を払おうと席を立つと、今日はいいですよと言われ、礼を言ってそのまま甘味処を後にする。
これからかの人の言葉通り、祝われに戻るために。





Happy Birthday Sougo Okita!

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