ぎんたま!
□きっとずっと
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土方は沖田が見回りから戻ってきたのを確認すると、隊長部屋を訪れていた。どこか遠慮した様子の土方に、自室であるはずの沖田までもが落ち着かなさを感じた。
「なあ、あのよ…」
「なんですか。歯切れの悪い。言いたいことあるんならハッキリ言いなせぇ」
呼びつけたりせずに、わざわざ副長みずから部下の部屋に足を運んだのだ。何か深刻な相談にちがいない。内々に危険を伴う捜査でも任されるのかと沖田は考えていた。だがそれはまったくの見当外れだったと、次の瞬間に気づかされることとなる。
「その、あれだ」
視線をさ迷わせコホン、とひとつ咳払いをしたかと思うと、かの上司は相手の瞳をひたと見据えて、言った。
「総悟。生まれてきてくれてありがとう」
その言葉に一瞬息を飲んだかに見えたが、直後に沖田はいつものポーカーフェイスに戻った。
「……月並みなセリフですねぃ」
「悪かったな!他に思いつかなかったんだよ!!」
「嘘。冗談です。すっげー嬉しい」
そう言って沖田は土方を抱きしめた。顔を埋(うず)められた肩口が濡れていることには気付かぬふりで、土方もその背中に手を伸ばす。
「誕生日おめでとう、総悟」
返事はなく、すんと鼻を啜(すす)る音だけが返ってきて、土方は相貌を崩した。
「これからもよろしくな」
へい……という部下に似合わぬか細い声が下から聞こえて、土方はとうとう声に出して笑ってしまったのだった。
………………………
5年後も10年後も、きっとずっと側にいる。
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