ぎんたま!

□情報は鮮度が命
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情報は鮮度が命


穏やかな朝の空気を割って、ダダダダダッという廊下を踏みしめる乱暴な音が近づいてくる。そういやあそんな名前の怪獣いなかったか、と徹夜明けの頭でぼんやり考えていたら例によって断りもなしに部屋の障子が開いた。
朝日に照らされた相手の髪が金色に浮かび上がって、その眩しさに思わず目を細める。

「土方さん!」

息を切らすことなどめったにありはしないのに。そもそもこいつが語尾にエクスクラメーションマークをつけて話すところなど見たことがない。驚きを顔に出さないようにしながら、とりあえず先を促す。

「オイ、どうしたよ」
「わかったんです」
「…なにが?」
「情報は鮮度が命って言いやすからねぃ」

──相変わらずひとと会話する気があるのかないのか。噛み合わないやり取りに苛立ちを込めて目の前の人物を睨み付ける。
不意にそれまで浮かべていた生意気な笑顔を引っ込めると、そいつは口を開いた。

「俺、アンタに惚れてたみたいでさぁ」
「惚れてたってのは………」
「安心しなせぃ。土方さんが思ってるような家族愛とか尊敬の念とかそんなんじゃねぇんで」

予想を見透かされた上に、それとは違うから安心しろとはどういうことだ。

「──普通安心ってえ言葉は思ってたことと同じ時に使うもんだろ」
「へい。だからさっきからそう言ってるじゃねえですか」
「ほーお。それじゃあなんだ?まるで俺もお前がき、き、気になってるみたいに聞こえるなァ」

思わず声が裏返りかけたのをなんとか押さえ、身体ごと文机に向き直る。机上には山と積まれた書類。当たり前だが、徹夜したので全て処理済みのものだ。それを、上から20枚ほど掴むと再び仕事に戻る振りをする。

「え!……いやぁ参りましたね。真選組の鬼の副長ともあろうお人が」

わざとらしいを通り越して棒読みなセリフに、よせばいいと経験からわかっているのに思わず返事をしてしまう。

「なんだ」
「まさか今まで気づいてなかったんですか。土方さんも俺のこと好きでしょ」
「ばっ!?年上をからかうのも大概にっ…!」
「相変わらずだねぃアンタも。嘘吐いていいのはひと月も前の話ですぜ。どこの世界に命狙われてまでその張本人傍らに置いとく奴がいるんでぃ」
「…それはてめえが勝手に!」
「土方さん、」
「なんだよ」
「こっち向いてくだせぇ」
「断る」
「いいじゃねぇですか」

ぐい、と手首を引かれたかと思えばいつの間にか正面まで迫っていたそいつの胸の中に抱き留められる。

「離せこのクソガキ!!」
「そいつぁ聞けない命令でさ」

そう言ってそいつの顔が迫ってきて、俺はもう駄目だと思った。
いやだ。

「──総悟!」
「へい」

ぴたり。名前を呼ぶと同時に腕の戒めも解けていた。

「…なんで」
「…やっと見てくれやしたね、俺のコト」
「ばかかてめえは……」
「バカで結構。でもねぃ…」

額に柔らかい感触。

「バカなりに、色々知ってるんですぜ。
─お誕生日おめでとうございやす土方さん。俺からのプレゼント、受け取ってくだせぇ」

──思考、停止。

「あ、そうそう。今日、土方さんと一緒の日ですから。見回りよろしくお願いしまさぁ」

なんでもないことのようにそう言い残すと、嵐は去っていった。

「あんのやろう…」

俺は誰もいなくなった部屋で、一人熱い額を押さえていることしかできなかった。










…………………………
どんなベタな少女漫画じゃあァァ!!
と。
思われた方も多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。ええ。出来上がりを見てえらいことになりました。最初は「◎◆&☆$△※」みたいなコッテコテな表現もやろうとしたんですが、なんとかセーブ。
あと、作中で土方の言っていた怪獣ってのはアレです。ダダです。ちなみにウルトラ○ンタロウ世代です。カネゴンも好き

真面目にあとがきすると、今回は土方一人称でラストまで総悟の名前を出さない、というのがコンセプトでした。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたっ!今後もよろしくお願いします!

土方さんおめでとォォォォ!!


20110505
円屋ちぼこ

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