ぎんたま!
□プロポーズは洋風で
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※サラリーマン土方と大学生沖田
お邪魔しやす。一応声をかけて買い物袋を持った土方のあとに続く。沖田がこうして年上の恋人の部屋を訪れるのは初めてのことではないが、なんとなく照れ臭くて宣言して入るのが習慣になっていた。おー、どうぞーという声が奥からかかる。
荷物を置いて沖田がすかさず居間のコタツに潜りこんでいると、自室でスーツから私服に着替えた土方が戻ってきた。藍色のタートルネックのセーターとジーンズ。相変わらず何着ても格好良い、という感想を沖田は心の中だけにとどめた。
コタツに入らない土方を沖田が訝(いぶか)しげに思い見ると、彼は何か探し物をしているようだった。
「そうだ、クロワッサンが」
「お。丁度いいや。腹減ったんでくだせぇ」
「はい?何言ってんだよ。食い物じゃねぇぞ」
そう言って土方がラックから取り出したのは、およそ独り暮らしの若い男性の部屋には似つかわしくないものだった。確かに表紙にはクロワッサンと書いてある。けれども。
「雑誌…ってアンタ主婦かい」
「誰が主婦だ誰が」
「食べるほうだと思って期待して損しやした。そもそもそんなマヨ塗れで飯なんか作ってたら味なんざたいして変わらないじゃねぇですか」
「ちげーよ!俺はお前にうまいもん食わせてやろうと思ってだなっ!!あ」
「かわいい」
「ばっかやろ…」
尻すぼみになったその声まで愛しくなって、顔を背けてしまった相手をふわりと抱き込む。
「土方さん、」
「なんだよ」
「俺だけの主夫になってくれますかねぃ」
腕の中のバカヤローという小さな呟きに、沖田はまた笑みを濃くした。
…………………………
土方が乙女。
このあと買ってきた材料で二人仲良くキムチ鍋をつつきます。