ぎんたま!
□手出し無用
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雪道に並ぶ同じ高さの影がふたつ。
「うう゛ー」
「…お前ね。俺と張り合うのは結構だけど自分のキャパぐらい考えろよ」
そうなったら担いで帰るのは俺なんだぞ、と銀時が続けても、土方は『んんんっ』と子どものようにむずかるだけだった。
「ったく、立たなくなるまで飲んでどうすんだか。──これじゃ肝心なものも立たないからね。心配すんのは足腰だけじゃないからね。銀さんMじゃないからおあずけなんかされてもちっとも喜ばないですから」
だがいくら言ったところで、土方からまともな返事が返ってくる気配は到底ない。
「ハァー」
ため息をつくと銀時は肩を揺すってずり落ちそうな土方を支え直した。
…そういや睫毛長いな、こいつ。
ふと銀時はそんなことを思った。
いつもは剣呑な光を放つ鋭い眼孔も、今はふせられたまぶたの中に収まっている。上気した頬にほんのり朱がさした目元。土方は完全に出来上がっていた。
あ。睫毛に雪乗っかってら。
「ふふっ」
「ん?」
土方の声に銀時が顔を覗き込む。
「土方、どうし…」
「ほら、ぎんときとまつげ白いのおそろい〜」
ふわっというよりはへにゃっのほうが近いか。普段鬼の副長と恐れられているはずの土方は、さながら天使のように微笑んだ。
「っ!!??」
「お、ま…!」
***
「おお万事屋!すまんなーわざわざ担いで来てもらって。トシがまた迷惑かけた。寒かったろ。屯所(うち)で茶の一杯でも飲んでいったらどうだ?」
「…いや、いい。俺ァこれで帰るから」
「そうか?遠慮なら…」
「─違うから。気にしないで。じゃあな」
「…?妙な奴だな…」
「えへへ」
「なんだか今日はご機嫌だな、こっちは」
近藤は頭に疑問符を浮かべつつ、引き渡された男を支えながら部屋へと踵を返したのだった。
……………………
よっぱらいとへたれの年末。