「銀ちゃん」
そう呼ばれ男は愛読書のページをめくる手を止めた。そのまま少女の次の言葉を待つ。
「レモンの味ってどんな感じアルカ」
「どうって?」
質問の意図を計りかね、銀時は問い返す。
この少女が突飛な質問をぶつけてくるのはいつものことだが、こんなに意味がわからない質問は久しぶりだ。
ソファーにごろりと預けていた体を起こすと、銀時は神楽の方に向き直る。ついでに持っていたジャンプも横に退ける。
「キスの味が柑橘類なんて酸っぱいもの食べないと無理アルヨ」
「……」
そうきたか。
「神楽、ちょっとこっちおいで?」
素直に少女は従った。
「…で、ご感想は?」
思いのほか反応の薄い神楽に内心動揺しつつ、銀時はなんでもないことのように極力ぶっきらぼうに尋ねた。
「…うそだったアル。」
「え、」
「キスがレモンの味なんてうそネ。いちご牛乳の味しかしないヨ」
「っ!」
まずい。
半分は本気だったけれど、まだからかうつもりでいたのに。大人の余裕なんてすっかり忘れて銀時は夢中で首を180度そむけた。
「えっと…」
「でも、銀ちゃんの味がする」
……………
銀さん、撃沈。
このあともしばらく真っ赤になってるといいと思います。そんでもって買い物から帰ってきたしんぱちから「あれ、銀さんどうしたんですか。顔赤いですよ」とか聞かれちゃって、なのにあまりにいつも通りな神楽にもやもやしちゃえばいい。
110118