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□少しだけ…
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今、僕はキョン君の目の前にいる…

いえ、キョン君を追い詰めている…と言った方がこの場合は正しいですね。

この状況になった理由は僕にある。

僕は涼宮さんなんて消えてしまえばいい…そう思っていました。

ですが…さすがに神の存在を消すことは無理だった…

だから…だから僕は、僕のモノには決してならない彼をいっそのこと殺してしまうことにしたんです。

そうすれば…僕はキョン君といつまでも一緒にいられる…

「キョン君…」

壁際まで追い詰められた彼の瞳には恐怖と不安が入り混じっている。

「古泉、何、する気だ?」

「見てわかりませんか?」

見てわかるはずだ。だって僕の手にはナイフが握られているのだから…

「まさかとは思うが…そのナイフで俺を殺す気か…?」

「そのまさかですよ。」

少しだけ、彼との距離を詰める。

もう彼に逃げ場なんて残っていないのだけれど。

「古、泉…お前、何で…」

何で?そんなの決まってる…

「……だからですよ…」

「え?」

「貴、方が…好き、だからですよ…」

もう、どうなってもいいと思った。

彼に伝えたこの言葉ももう叶うことはないのだから…

いくら嫌われていたとしても、もう…

「古泉…お前…」

彼の手が僕の頬に触れる。それで、やっと僕は自分が泣いていることに気が付いた…

「何で…っ!」

何で涙が出るんですか…!?彼を殺すって決めたのに!それなのに…何で…

「古泉、こっち向け。」

そう言われてキョン君の方を見ると、一瞬、キョン君の顔が近くなって何かが口にそっと触れた。

「え…」

今のは…キス…?何で、彼は僕に…

「一人で突っ走ってんじゃねぇ…」

「え?」

「俺の気持ちは無視なのかよ…」

「えっ、と…キョン、君…?」

彼の言ってる意味が理解出来なかった。何が言いたい?彼は何をしたい?

「俺は、お前が好きだ。」

「え……」

彼はなんと言った?僕を好き?彼が、僕を?

「お前が俺を殺そうと思った詳しい理由なんて正直どうでもいい。そんなもん知ったこっちゃねぇ。でもな、お前泣いたじゃねぇか。本当は俺を殺したくなんかないんだろ?」

その通りだ…僕は彼を殺したくなんかなかったんだ…

彼のことが…好きだから…

でも、僕にはこれしか道が見付けられなかったんだ…

彼に嫌われていると思っていたのだから…好きなのは僕だけだと思っていたのだから…

「キョン君…」

「何だ?」

「好き、好きなんです…!僕は貴方が…!」

ずっと言えなかった独り呟いて押し込めていた感情を彼にぶつけた。

「俺もだ。好きだ、古泉。」

彼はそんな僕を受け止めるようにそう言うとまた唇を重ねた。

お願いです…

神様、どうか少しだけ僕を許して下さい…

この幸せを…どうか…少しの間だけ…


〜Fin〜


2009.9.30
 

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