幸せ古泉計画

□二人分、買って
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SOS団の部室。

ここには今、僕と彼…キョン君の二人だけでオセロの駒を置く音とひっくり返す音だけが響いている。

それというのも、涼宮さんが朝比奈さんと長門さんを連れて「私たちは出掛けて来るわね!もしかしたら帰って来る可能性もあるから二人は部室で待機してて!」と言い残し出て行ってしまった為です。

涼宮さんが出て行ってからもう一時間近く経過しており、その間僕たちは無言でオセロをやり続けている。

なんとなく彼の顔を見ると、つまらないという文字がぴったり当て嵌まりそうな顔をしていた。

仕方ないと思いつつ、盤面に目線を戻し、何処に置けば彼の黒に勝てるかを思案する。

「古泉。」

今まで黙ってオセロをしていた彼が急に僕に話し掛けてきた。

「なんでしょう?」

「喉、乾かないか?」

どうやら彼は喉が乾いたらしい。

今の季節は冬。しかも暖房をかけて乾燥している空気の中に居たら誰もが喉が乾くだろう。

「でしたら、何か買って来ましょうか?」

「いや、いい。自分で行く。」

僕の提案を却下すると彼は席を立ってドアへ向かう。

「もしハルヒが帰って来たら言っておいてくれ。」

「わかりました。」

そう言い残し彼は部室から出ていった。

一人になり、一応盤面に駒を置いた後、特にすることもなくぼーっとしていると、彼がコーヒーの缶を二つ持って帰ってきた。

何故二つ持っているのだろうと考えていると、彼はその持っていた二つの缶の一方を僕の方に差し出した。

「ほら。」

「え?」

意味がわからず差し出された缶を見ながら狼狽えていると「いらないのか?」と声がした。

その言葉でやっと僕の為に買って来てくれたものだと理解する。

「え、っと、じゃあ、いただきます…」

躊躇しながら僕が缶を受け取ると、彼はいつもの指定の席に着きコーヒーを飲みながら、またつまらなそうな表情でもう黒に染まりかけている盤面を見つめ始めた。

僕は缶を開け、中に入っているコーヒーを一口飲む。

暖かさと同時に幸せが僕の中に広がった気がした…


〜fin〜


2009.10.14

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ひよこ屋
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