刀剣乱舞

□刀剣乱舞 本丸生活編@ 第一章
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刀剣乱舞 一 『本丸のお話』


 西暦二二〇五年、時の政府は審神者なる者を各時代へ送り出す。
 審神者、それは付喪神を使役して歴史改変を目論む敵、歴史修正主義者と戦う使命を持つ者。そして、眠っている物の想い、心を目覚めさせて自ら戦う力を与え、振るわせる、技を持つ者。その技によって生み出された付喪神「刀剣男士」と共に歴史を守るため、審神者は過去へ飛ぶのだった。

*****

 自分に与えられたものが多すぎて、持て余すことは間違いないなと思った。
『敵をすべて葬ること……それがお前のすべきこと』
 どうして自分なのかと聞けば、こういう答えが返ってきた。
『今のところお前だけが唯一の成功例なのだ。付喪神を下ろし、使役できる……たった一人の審神者』
 戦うのは自分ではない。
 命じて戦わせる。
 付喪神にそんなことを命令して、果たして聞いてくれるのか、実感はなかった。それでも放り込まれた本丸という場所で生きていくしかないのだと、諦めるように使命を背負って暮らす日々が始まった。


 本丸はとても広いのだが、刀剣男士を呼ぶための鍛刀部屋という場所がある。
「最初にお迎えしてただく男士は五人のうちの一人と決まっております。さあ、誰をお選びになりますか?」
「え? 俺が決めるの?」
「はい」
 審神者のサポート役だという、こんのすけという狐が生活に慣れるまで審神者の周りで説明をしてくれるのだという。
 白とレモンイエローの毛並、額に赤い人魂のような文様があり、つぶらな瞳で人語を喋る狐である。そのこんのすけが鍛刀部屋に連れてくるなり、そんなことを言ったのだ。最初の刀剣男士は特別で、初期刀という。
 その初期刀と一緒に最初の鍛刀を行うのだという。
「説明されても、わからないし……どうせみんな後から来るんだよね? だったらちょっと待って、あみだくじしてくる」
 こんのすけが初期刀として選べる五人の刀剣男士の説明をしてくれるが、まったくわからないので、適当に地面に木の枝であみだくじを引いて決めた。
 そしてくじで決まった瞬間に現れたのが、
「俺は加州清光……あんたは俺を可愛がってくれて、うまく使いこなせるのかな」
 普通の人間の男である。加州清光と名乗った男は少し困ったような顔をして初めましてと挨拶した。
「よろしく、俺は椎葉怜音。可愛がるって意味が色々あると思うけど、大事にするよ」
 刀の想いが具現化した加州清光は、人間の男性と全く変わらない姿をしている。
 赤い瞳に、長くて黒い髪を後ろで束ねていて、年齢は外見だけ見ると人間でいえば十六から二十の間で、服は黒を基調とした洋装である。
 怜音の言葉に一瞬呆然としていたが、自分の主だとわかると首を傾げたりしてジロジロと怜音を見つめてくる。
「真っ白な主だなー……あ、でも髪も目も黒いか……」
 怜音は自分の外見に頓着しないのだが、加州は気になるようだ。
 怜音は首元まで伸びた黒髪に、つぶらな黒い瞳の普通の十八の男である。身長だって加州より大きいことは目の前に立ってわかった。
 加州が真っ白だと言ったのは、怜音が白い着流しに身を包んでいたからだ。
「えっと……もう一回鍛刀して、仲間を増やさないと」
 鍛刀部屋では鍛冶師が一人常駐し、木炭、玉鋼、冷却材、砥石の四つの資材の数を決めて、鍛冶師に頼んで鍛刀する。
 その時審神者はただ祈るだけ。それで付喪神が誕生してしまうのだ。
「俺だけじゃ不満なの?」
 加州が含みのある言い方で尋ねてきたので、怜音は首を横に振る。
「いや、そうじゃなくて……一人じゃ戦えないよ。敵も一人で襲ってくるわけじゃないみたいだし、怪我させるために戦場行かせるわけじゃないから」
「主……」
「まだここに来たばかりで資材少ないから、とりあえずこの数でお願い」
 鍛冶師に資材の数を指定して、両手を合わせて祈る怜音の姿を加州は複雑な思いで見つめていた。
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