長篇小説
□気付いたのは唐突に
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「…三蔵」
「……八戒か」
部屋を出た三蔵は、あてどなく町の方へ向かい、付近の森の中まで来てしまっていた。
八戒はまるで、三蔵が此処に来るのがわかっていたかのように、何処からか現れて三蔵に声をかけた。
「悟空、不安がってましたよ」
「……だからなんだ」
まるで、そんな事は分かっているとでも言いたげに言葉を返す。
八戒は、そんな三蔵を一睨みしたあと、短い溜息と共に、三蔵の核心を突いた。
「悟空の事…気になっているんじゃ無いですか?」
「…っ」
小さく息を飲む音が聞こえた八戒は、やっぱりと呟くと、三蔵の隣に座り込んだ。