月夜の片倉君〜番外編〜

□衝撃!月夜の片倉君
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『衝撃!月夜の片倉君』



とある夜、俺が屋敷で休んでいると何処からか不思議な照りつけが俺の私室を明るくする。


まさか奇襲か!?


そう思って愛刀である黒龍を片手に私室を静かに出ると、何やら中庭の方からその怪しげな照りつけがある
ことに気が付いた


「怪しいのは中庭か」


そう呟きながら中庭に気配を消して静かに出向くと、俺はそこで衝撃の光景を目の当たりにした。


「こ、こいつは…!?」


中庭の真ん中にとてつもなく長い刀が鞘もなくむき出しの状態で地面に突き刺さってやがった。
それが月光の照り返しで刃の部分が明るく光りそれが反射して屋敷に照りつけていたということも同時に理解できた。


「かように長ぇ刀、一体どこのどいつが使ってやがる…?」


近づいて抜いてみると、その長い刀は柄まで合わせると俺の背もしくはそれ以上の長さだった。


「まるで前田の風来坊の所持している槍みてぇだな」


その辺りに鞘が落ちてねぇか確認してみたがそんなものはどこにもなく、そして誰が何のために屋敷の中庭に
こんなもんを突き刺しやがったのか皆目検討すらつかねぇ。

とりあえず屋敷内に持ち帰ろうと柄の内側部分を持った時、刃の部分に刻まれいていた文字に俺は気づいた。


“正宗”


「…これは、どう読んでも“まさむね”だよな?」


となると、この長い刀は政宗様の…?

いや、だがあのお方は六爪しか所持しておられぬはず。


それによくよく見れば“政宗”ではなく“正宗”と刻んである。

誰かが政宗様の為の献上品として贈ったのか?


だが、政宗様への献上品だとしても無礼が過ぎる。
鞘もねぇあげくに、かように雑にこの長刀を扱うとは…
常識はずれもいいところだぜ…

そんなことを悶々と思いながらも、とりあえず私室にその長刀を持ち帰ろうとする。

が…

長すぎることと重さが重なり、平衡感覚がまるでねぇ。
まるで生まれたての動物かの如く、足元がおぼついてどうにも屋敷まで持って上がれねぇ。


「い、一体何だってんだまったく…勝手に屋敷に中庭に刺しやがったあげく、長く重くて持ち運び困難で
苦労しなきゃならねぇなんざ…身勝手にも程があるぜ」


文句を言いながらどうにか屋敷内に持って入ろうと引きずったり持ち上げたり、
どの角度をもって屋敷に長刀を入れるか試行錯誤を繰り返しながら刀の角度や高さを変えていたところ…

ドゴッ

と鈍い音が響いて、その次の瞬間に何かが倒壊したような音がした。

そして、音がした方に目を向けるとそこには今さっきまで立っていた灯篭が見るも無残な程に倒壊し破片が
あちらこちらに飛び散っている。


「……しまった、やっちまった…」


刀の先端が灯篭に思いきり当たったらしく、その反動で灯篭が崩れ落ちる形と相成ってしまった。


あれだけのすごい音がして、政宗様が起こしてしまってなければいいが…


とりあえず刀を一旦置いて、灯篭の後片付けを始めた。


「政宗様にどう申し開き致せばよいのか…、素振り中に灯篭を砕いてしまいました、と言うべきか…?」

「そんなことを言って、竜の眼を誤魔化せると思うなよ?」

「無論、それは承知致しておりますれ…ば………まっ、政宗様っ!?」

「Hey,小十郎。丑三つ時に何一人でこそこそ疾しいことをしてやがる」

「や、疾しくなど…!…といえど、貴方様に信じて頂けるかどうかは定かではございませぬが…」


そう言って俺は今までの全ての経緯を話した。


「Hum−…ようはこの刀が何処から誰が何のために持ってきて残していったのか分からねぇってことだな?」

「えぇ。ただ一つ分かることとすれば、この刃の部分に“正宗”という文字が刻まれていることだけにございますれば…」

「“正宗”か。さしずめ、俺のfanからのpresentじゃねぇのか?」

「ま、まさか…だとしても献上品とあらば、それなりの過程がございますればそれはないかと…」

「…jokeだとしても、そこはあえて肯定しとけ小十郎。…切なくなるだろうが」

「は、はっ。申し訳ございませぬ…」

「だが、持ち主も来た場所も分からねぇんじゃ返品のしようがねぇな。」

「仰せの通りにございまするな、困ったものです」

「ならよ、こいつは今日から伊達軍の刀とすりゃあいい。」

「……政宗様、それは本気で…?」

「もしかしたら、刀自らが好んで俺たちの軍に来たのかもしれねぇぜ?
どこかの愚かな主に愛想を尽かして、正宗という名の通り伊達軍の入隊を志願してきやがったのかもしれねぇ」

「ま、まさかそのような夢物語の如く…信じられませんな」

「だが、現にこいつはこうして此処に居る。それだけで十分だろ。
それに、こいつがありゃあ野菜の収穫、一気に出来るじゃねぇか。」

「ほ、ほう、畑にも効果が…それも一理ございまするな」

「だろ?せっかくこうして来てくれたんだ。しっかり活用してやらねぇと、それこそ宝の持ち腐れだぜ。You see?」


成程、無理に戦の道具として使わずとも日常生活で役立たせればいいのか

そういわれてみりゃあ、いちいち短い鎌で時間をかけて刈るようなところもあるから、こいつなら一振りで…


我が主の言葉に妙に納得させられてしまった俺は灯篭を砕いたことも忘れていつの間にか上機嫌になっていた。


「っし、そうと決まれば一旦中に入れるぜ小十郎」

「はっ。承知致しました。」


そして今度は二人がかりで刀を中に持ち帰ろうと試行錯誤。

今宵はちょいと混乱したが、それでも結果オーライ。

かような夜もまた悪くねぇかもしれねぇな。


「Shitッ…小十郎、sorry…障子、やっちまった」

「ま、政宗様!それは先日貼り替えたばかりの…!…っ、ま、政宗様、こちらに過度に寄られてこられては
今度は襖が…!」

「Ah!?いちいち細けぇこと言ってねぇで、さっさと入れるぞ」

「この襖も先月替えたばか……あぁっ!」

「あ〜あ、穴が空いちまったじゃねぇか。お前がどんくさいせいだ小十郎」

「そこで小十郎のせいになりまするか!?」


やはり、こんな夜は一日だけでいい。



END



……………………………………………………
もうお気づきの方もおられるかもしれませんが、今回はコラボ作品にしてみました。
長刀『正宗』の持ち主はファイナルファンタジーVIIに出てくるセフィロスです。
小十郎もセフィロスも声優さんが森川さんということで、正宗=政宗繋がりもあるということで微妙ながらコラボしてみました(笑)
突発的な思いつきで申し訳ありません(反省)
もちろん片倉君伊達君共に二等身です。
その二人が実寸大の正宗をフラつきつつ試行錯誤しながら扱っているところを想像したら可愛かったので…(爆/笑)

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