月夜の片倉君〜番外編〜

□過保護!月夜の片倉君
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『過保護!月夜の片倉君』


最近、アイツの過保護度合いが増した気がする…


「この羽織を筆頭に届けようぜ」

「おう、そうだな」


どこからか伊達の連中の声がしやがる。
どうやら厚手の羽織を届けてくれるみてぇだ。

そして伊達の連中の会話の後に必ず聞こえてくる聞きなれた野郎の声。


「政宗様へは俺が届ける。おめぇらは下がっていいぜ。」


最近、俺の御前にはすっかりアイツの姿しか見なくなったような気がする。

まぁ、それはそれでいいんだけどよ。


「ならこれを筆頭までお願いします、片倉様」

「あぁ、分かった」


いや、これでいいのか…?


そんなことを独り言のように呟いているとアイツがやってきた。


「政宗様、小十郎にございます」

「入りな」

「はっ。失礼致します」


案の定、手には厚手の羽織を持ってやがる。

表情もなんとなく何故か勝ち誇ったようにも見えるが…


「厚手の羽織をお持ち致しました」

「Thanks,そこに置いておいてくれ。」

「いえ、なりませぬ。今お召しになられよ。」

「Ah?Why?」

「この部屋は暖こうございまするが、外は比べ物にならぬほど冷え込んでおりまするれば、
気温差でお風邪を召されては伊達家の一大事と相成りまするゆえ何卒お聞き入れ頂きたい」


くどくどと始まる小十郎の話。

俺のことを思っての言動は有り難ぇが、俺はもうガキじゃねぇんだぜ?

それぐらい分かって…


「聞いておられますか政宗様?」

「あぁ、聞いてる。よ〜く聞いてるぜ」

「ならば、この羽織をお召しになって下され。
今温かいお茶を淹れて参りまするゆえ」

「OK,ならよろしく頼むぜ小十郎?」

「はっ。承知致しました」


部屋を出ていく見慣れた背中を見送りながら足音が遠退いていくと溜息をつく。

ったく、小十郎にはいろんな意味で敵わねぇな…

渋々アイツの持ってきた羽織を背中から羽織る。

だが、その温かさはやっぱり本物だ。

温けぇ…


しばらく背から羽織った羽織を見ながら、俺はとあることを思い浮かべた。

それは…


「もし、小十郎が過保護じゃなかったら…」


アイツが過保護じゃねぇ、他軍の野郎と同じように俺を扱ってきたとしたら…


「……Ha,俺としたことが…」


寂しい


そう思っちまう俺がいる。

ってことは、今のアイツの過保護っぷりが俺にとってもちょうどいいってことか?

だとすりゃあ、俺も相当…


「お待たせ致しました政宗様」


そうこう考えているうちにアイツが茶を持って戻ってきた。


「Thanks,小十郎」

「…如何なされた?何か考え事をされているようにお見受け致しますが…」

「……やっぱりお前はすごいぜ小十郎。何でもお見通しってわけか」

「伊達に幼少の頃より貴方様にお仕えしておりませぬゆえ。して、如何なされた?」

「Ah-…お前の過保護がなくなっちまったらどうなるのかと思ってよ」

「…おそれながら、それは絶対にございませぬ。
貴方様がおられる限り、小十郎は何時なりとも過保護にございまするゆえ」


…コイツ、自分が過保護だと認めやがった…

いや、認めた上で過保護だから、さらに過保護に磨きがかかってやがるのか?


「そうか、それを聞いて安心したぜ」

「しかしながら、何故そのような…?」

「いや、ふとそういうことを想定したら寂しくて切なくなった、ただそれだけのことだ」

「………政宗様はやはり小十郎の心を掴んでなりませんな」

「Ah?そいつは一体どういう意味だよ小十郎」

「申し上げたままの意味合いにございますれば、その理由はこの小十郎だけが知っておれば十分かと」

「おいおい、何自己満足してやがる。俺にも聞かせろ、その理由とやらを」

「おそれながら、それだけはなりません」

「Why?いいだろ、俺のことなんだからよ」

「今はまだ内密にさせて頂きたい。その代わり、しっかりと貴方様を甘やかして差し上げましょうぞ。
無論、二人きりの時に、にございますが」

「っ…」


こうして俺は今日もアイツのpaceに流されっぱなしだ。

このpaceを俺のpaceに持ってくることは果たして叶うのか?


ま、それでも今が十分happyだから俺のpaceだとかはどうでもいいがな。


「お慕いしております、政宗様」

「I love you,小十郎」


and I'm falling love…



END



……………………………………………………
筆頭のことになるといつでも過保護な小十郎。
それは他軍に対しても自軍に対しても変わりません。
とりあえず筆頭命な小十郎です(笑)

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