月夜の片倉君〜番外編〜

□妄想!月夜の片倉君
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なんとも愛らしい…

この小十郎にはまるで…


『妄想!月夜の片倉君』


三日月の明るく輝くとある夜、俺は政宗様と共に縁側で月見酒をしていた。


「今宵もいい月が出てるな、小十郎」

「えぇ、左様にございまするな。かように明るい月は久方ぶりにございます。」

「美味ぇ酒をそんな月下でお前と二人きりで飲むってのも、また一興だな。」

「有り難き幸せ。これから時折是非貴方様とこうして月見酒をしたいものだ。」


互いにいい雰囲気の中酒を飲み進めていると、縁側の隅の方から猫らしき鳴き声がしてきた。


「What?catの鳴き声だな。」

「えぇ、そのようですな。この縁側におるのでしょう」


政宗様が酒をやめ縁側におりて猫を探し始める。


「Hey,cat!何もしねぇから出てきな?」

「小十郎も手伝いましょう」


そして俺も酒を飲むのをやめて政宗様と共にその猫を探し始める。

しばらくして、一匹の黒猫が木陰から出てきた。


「おっ、black catじゃねぇか。どおりで見つかりにくいはずだぜ。」


黒猫を見つけるなり我が主がゆっくりと近づいていき少し距離を空けたところでしゃがみこむ。
そして、人差し指を立てて己の方に来いと言わんばかりに少し曲げつつ、口笛で呼びかける。


「政宗様、野生の猫ゆえお気をつけなされよ。
万が一引っ掻かれでもしたら…」

「No problem,それに引っ掻いてくるなら元気な証拠じゃねぇか。」

「はぁ…政宗様、そういう問題では…」


という間に、政宗様が黒猫を抱き上げる。


「ま、政宗様っ…!」

「So cute,お前、どこから来たんだ?誰かに飼われていたのか?」


俺の言葉を無視して黒猫と会話をしておられる…


少しばかり黒猫に妬いちまいそうだぜ…


とはいえ、この光景…
誠ほほえましい…

もし、この黒猫が政宗様だったなら…

きっと愛らしい耳に尻尾が生えていて俺に懐いてこられるのだろうな。

あんな風に…

そうしたら幾らでも愛でて差し上げるだろう…


(小十郎にゃぁん、構ってくれねぇと拗ねちまうからな?)

(黒猫政宗様、いえ、猫宗様、いくらでも構って差し上げまする)

(へへっ、嬉しいぜ。にゃぁん、小十郎〜)

(っ…愛らしすぎて我を忘れてしまいそうだ、今宵はこの小十郎の布団の中に入れて差し上げましょう、
愛らしい愛らしい猫宗様。)

(Really?そいつは願ったり叶ったりだぜ。お前と共に寝たら温かいからな)

(もう絶対に離しませぬ。小十郎のものであるという印にこれを…)

(首輪、か。へへっ、thanks小十郎!)

(猫宗様、貴方様は今日からこの小十郎だけのもの。連中には指一本たりとも触れさせませぬゆえ)

(小十郎、I love youだにゃんっ)

(ね、猫宗様っ…なんとも愛らしいっ…)


「……郎、…十郎、小十郎!」

「…………ハッ。如何なされました猫宗様?」

「Ah?猫宗だ?小十郎、誰に向かってそんな口を聞いてやがる」


ん?

猫宗?


…待てよ、俺。

今何を口走った…?


「も、申し訳ありません、政宗様っ…!
つい、貴方様が猫になったことを想像してしまいっ…!」

「…お前、堅物かと思いきや意外と妄想してんだな。」

「も、妄想などと…!」


いや、今のは間違いなく妄想だ…

駄目だ、愛らしい政宗様を目の前にすると、どうも正常じゃいられねぇ…


「んで?妄想した揚句に出た言葉が猫宗様とそのニヤケ顔ってわけか。」

「に、ニヤケてなど…!…そんなにニヤケておりましたか?」

「あぁ、デレデレした面をしてやがったぜ?」


政宗様の言葉に同意したように、政宗様の腕の中にいる黒猫が、にゃぁ、と鳴く。


竜の右目ともあろうこの俺がデレデレ…

なんたる恥さらしをしたんだ、俺は…

心の中だけでとどめていようと思っていたのに表に出てそれを政宗様に見られてしまうとは…

この小十郎、一生の不覚っ…!


「はぁ………」

「だが、俺は嬉しかったぜ?俺のことをいつでも考えてくれてんだなぁって思ってよ」

「猫む…いえ、政宗様…」

「なんなら、この俺に首輪でもしとくか?そうすりゃあお前のものだって分かるだろ?」

「…!!是非喜んで!!」

「…小十郎、目ぇ輝いてるぜ?」

「ハッ。こ、これはしたり…失礼しました。」

「ったく、面白ぇ奴。なぁ、タマ?」


面白いとは失礼な。
この小十郎、いたって真剣にございまするぞ?

それにタマとは…

また独自性のないありふれた名をお付けになられましたな、政宗様…


「小十郎、今宵共に寝てくれるか?」

「も、もちろんです」


どうしたんだ、この展開…
俺の妄想のままじゃねぇか。

こいつはもしかして奇跡が起こった…!?

俺の妄想は現実化されたりするのか…!?


その後、政宗様にお聞きしたところ、どうやら俺の妄想が知らず知らずのうちに
俺自身の口から全部漏れていたらしい…


どうやら、俺はとことん隠し事ができねぇ性分らしい。



END


……………………………………………………
黒猫に半獣化した筆頭を妄想中の小十郎。
その妄想はどこまでも果てしなく続いて行くのでした(笑)

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