小説

□word
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「小十、郎〜…」

「まったく、あれ程申したにもかかわらず、貴方様は…」


『word』


戦に勝利したその夜、政宗様は久方ぶりに宴を催された。
そこまでは、よかったのだが…

「こじゅ……ろ……」

「はい、何でしょう」

お酒を召し上がられすぎて、泥酔状態となってしまった。

ゆえに、俺が抱き上げて政宗様を自室までお連れしている最中だ。

「酒…まだ飲みてぇ…」

「その状態で、まだお飲みになるのは許しかねます」

「Ah〜…?」

「酒は飲んでも呑まれるな、という言葉をご存知ですか?」

「Of course…呑まれる奴は、余程弱ぇ野郎とみえる…」

まさに貴方様です、政宗様…

「はめを外すのはよろしいかと存じますが、酒に関してはもう少しご自重なされませ?」

「……………」

「政宗様?」

眠っておられる…
まったく、仕様のないお方だ…

なれど、貴方様の寝顔はまるで、梵天丸様の如く愛らしい…

もし、この小十郎がかような位置に居なければ、きっと…狼になって貴方様を……

「…いかん、いかん、俺としたことが…かような想いを抱くとは…」

なれど、それほど貴方様のことが愛おしいのです、政宗様…

この気持ちを貴方様にお伝えできる日が来るかは、この小十郎には分かりかねますが…

「好きです、政宗様…」

きっと今の貴方様に、この言葉はお耳に入ってはおりますまい…
今は、それでいいのです…
今は……


END



……………………………宴で久方ぶりに泥酔状態の筆頭。
泥酔状態の主を心配しつつも、梵天丸のような寝顔に、癒される小十郎。満更でもないみたい。
 

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