小説
□secret
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「一つ、二つ、三つ………九つ、十。もうよいですか、梵天丸様?」
「もういいぞ、小十郎!」
『secret』
とある日の昼下がり、梵天丸様と俺は縁側でかくれんぼをしていた。
「では、探しに参りますぞ?」
しばらく捜すと、木から伸びる長い人影。
陽の向きが変わり、木陰が動いたのだろう。
だが、梵天丸様はその事に気付かず、まだ一生懸命隠れていらっしゃる…
見て見ぬふり
「さすがは梵天丸様、隠れるのもお上手だ」
何気なく、その木を通り過ぎる。
様々な所を捜すふりをして、梵天丸様の様子を伺う。
「この小十郎、お手上げです。
貴方様が、あまりに上手くお隠れになるので、分かりませぬ」
すると案の定、木陰からひょっこり現れた小さなお方。
それはもう満遍の笑みで…
「どうだ、小十郎!
梵天丸はすごいだろ?」
「えぇ、お見事にございました。」
「今度、小十郎に上手い隠れ方を伝授してあげるよ。」
「有り難き幸せ」
この遊びの真意を知るのは、この小十郎だけ…
申し訳ありません、梵天丸様…
なれど、此度の一件は、この小十郎一人の秘め事にさせて頂きたい…
「小十郎、またかくれんぼしような!」
「承知致しました。」
END
……………………………小十郎の親心的なものが満載な一場面をテーマに書いてみました。
この頃から、小十郎の政宗に対する気遣いは健在でした☆