小説参

□I need you〜政宗side〜
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どうして、俺はお前のこととなると、こうも…

Why…


『I need you 〜政宗side〜』


奥州内乱に一区切りがついて屋敷に帰還した翌日、
改めて宴をすることになった俺たち伊達軍。
その席はいつになく和気あいあいとしていて賑やかだ。

腹踊りをする奴もいりゃあ酔って盛大に騒ぐ奴もいる。
どんなことでも其の時だけは無礼講。
それが伊達式宴。

その日も酔った勢いで小十郎や俺に絡み酒してくる奴が多かった。
だが、そこで俺はとある異変に気付いた。


「片倉様って、好きな人居るんスか〜?」

「あっ、そういやぁ先日、町娘の一人が片倉様に想いを寄せてるだとかそういう話を耳にしたんスけど、
片倉様自身どうなんスか?」

「お、おめェら、一体何の話をしてやがる…!?」


連中が複数、小十郎に酔った勢いでべったりと密着しながら終始そんな話をしている。


いつもの絡み酒だろ


そう思ってあえて話をthroughしていた俺だったが、
聞いていくうちにつれて、心の底からなにやらモヤモヤしたものが沸き上がってきていることに気づいていた。
それは徐々に苛々に形を変えていき溜息へと変わっていた。

その時の俺には何にモヤモヤしているのかも分かっていなかった。
だからこそ余計に苛々が増していき、俺は頭を冷やすために一人宴の席を後にした。

縁側を歩きながら髪をぐしゃぐしゃと無造作にかき乱しながら時折無意識にshitッと舌打ちをする俺。
いつからこんな苛々しているのかという原因元を辿っていっていると、
とある所に辿り着いた。
それは、


小十郎の恋愛話


「小十郎だって一人の武人である前に一人の男だ。
恋愛沙汰があったって何らおかしくねぇじゃねぇか…!」


思っていることが無意識のうちに声になりながら、足音を大きく響かせつつ、ただひたすらに廊下を歩いていた。

小十郎は男だ。
好いた女子の一人や二人…

そう心に言い聞かせながら、落ちつけようと繰り返し試みた。
が、おさまるはずもなく、さらに苛々は増していった。


「Why…普通のことなのに、どうしてこうも苛々しやがる…!?
今日の俺はso crazy…どうかしてやがるぜ…」


認めたくなかった。
それが、女子がよく表す感情、"jealousy"であると。
それは奥州筆頭として女々しいし一番coolじゃねぇ。
何よりもそんな感情が小十郎にバレて嫌われるのが一番怖かった。

今までどんなことがあろうが背を守ってきてくれていた小十郎が、
こんな俺の馬鹿げた感情で嫌われたら洒落にもならねぇ。


「Ha…笑えねぇjokeだ…」


だから俺は必死で忘れようと繰り返し違うことを頭に思い浮かべながら
井戸の所まで行くと頭から水をかぶってびしょ濡れになりつつ無心になろうと繰り返し精神を鎮めようとした。
そんな時だった。


「政宗様!!一体何をなさっておいでか!?」

「っ…小、十、郎…?」


慌てて駆け寄ってきて懐から出した手拭いで俺の髪を拭いていく小十郎。
そんな小十郎に申し訳が立たなくて眼を合わせるどころか顔すら上げられなかった。


「政宗様…?如何なされた?」


覗き込むようにして俺の表情を伺ってくる小十郎。
俺が口を無意識にくいしばるとそれを察してか無言で抱きしめてくれた。


「貴方様に何があったのか、仰せになられたくないのならこちらからは無理に伺いますまい。
しかしながら、小十郎だけには何卒我慢はしないで頂きたい。宜しいか政宗様?」

「………嫌われたくねぇから…お前に…」

「……は?今、何と仰せになられた?」

「だから…お前に嫌われたくねぇっつったんだよっ…!」


ヤケクソになって紡いだ言葉の勢いで俺は顔を上げて小十郎と眼を合わせた。
その隻眼からは涙が溢れて零れ落ちていた。
だが、我慢の限界だった俺は、思うがまま、感じたがままを全部小十郎にぶちまけてしまった。
ハッと気づいた時には小十郎が呆気にとられた表情で俺を見つめていた。


Shitッ…!俺としたことが…やっちまった…!!


一気に押し寄せる後悔の念。
絶対に言わないと心に決めていた言葉の数々を全部ぶちまけた俺にとって、
最早御先真っ暗だった。


the end、終い、だな…


全てを諦めかけたその時だった。
小十郎が再度、先達てまでの抱きしめる力とは比べ物にならねぇほどの力で俺を思いきり抱きしめてきた。
その瞬間、俺はワケが分からなかった。
何故白い目で見ないどころかこんなに俺を強く抱きしめているのかを…


そして、そんな小十郎の本心を俺が知ったのは、まだまだずっと先の話。




END



……………………………………………………
『I need you〜小十郎side〜』の対となるお話です。小十郎が恋だと気づいた翌日、政宗様も自分の気持ちに気づいてしまったというお話。
でもまだまだ主従として歩んできた二人にとっては受け入れがたい感情。
そんな葛藤を入れつつ、それでも相手が好きだという感情を受け入れつつ…そんな距離感の二人もまた大好きです!
ぎこちなくも甘い関係になってくれたらいいなって思います!

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