higurashi

□泣崩し編
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  ねぇ 夢でも 現実でも

  あなたがいればいいなんて

  おかしいかしら?





  

  
  泣崩し編







こんなにも空が青いと、今日はいいことが起こるだなんて想像してた。









悟史君がいた。一年前、どこかへ行ってしまった悟史君が・・・私の目の前に居る。
こんな残酷な夢は無い。彼はいままさに、私にキスを迫っていた。


「え!?ちょっと!」


夢だとわかっていても、拒むことなんか出来なかった。振り払えば 振り切れば 頬をつねれば現実に帰れる・・・。でもそうしたくないのが本音だった。


懐かしい味がした。懐かしい温度がした。
懐かしさは唇を伝って、ゆっくり心に溶け込んでいく。

夢ではない。現実なのだろうか。こんなリアリティあふれる夢でいいのだろうか?


「詩音」


唇を離した瞬間、彼は私の名前と丁寧に呼んだ。一文字一文字壊さないよう・・。そんな目は曇っているような気もしたけど、すぐまた笑みに変わる。

あなたは・・・何をしたいんだろう・・・


「悟史君。」

「元気?詩音。」

「元気だと思いますか?」

「詩音は顔に出るからね、元気なことぐらいわかるさ」


そうだ。私は


「ふふふ、元気よ」


悟史君は、私の全体を一往復して、なにか変わってないか確かめているような使いをした。


(・・・・夢なんでしょうね)


背景は学校の廊下。掲示物は、彼が失踪する前のものであった。


「・・・悟史君。これは夢なんですか?」

「詩音が夢と思うなら夢だと思う。」

「あなたは、悟史君ですよね?」

「そう思うよ、僕自身自分がわからないんだ。」


彼は、うつむいた。


「なんで・・私の夢の中に来たのですか?」

「会いたかったから」

「嘘ですね。」

「なんで?」

「一年もほったらかしにしてるからですよ」

「ははは、それもそうだね」


そういうと、軽く頭をかいて苦笑する。
笑ってない、ひきつっている。


「でも、会いたかったから」




・・ほかに理由があるんだろう。


「嘘です」


彼は、白い肌をすこし赤く染めていた。
照れている?





「詩音にさ、渡したいものがあったんだ。でもね、僕は詩音にいつ会えるかわからないから。」



ごそごそと、ポケットをいらっている。堅く固形なものがはいっているようだ。



『プレゼント・・』




・・・声がかすんでいく。


「悟史・・君・・・」

『もう、さよなら』

「またあってくれますよね?」

『わからない。もう無理かもしれない。』

「そんな・・」

『詩音・・元気?』



彼は少しずつ透けていく手で、私の頬をつたう涙を拭うと、またキスをする。

これが最後かのような、そんな寂しくて・・冷たい・・キス。


「・・・元気・・ですよ・・」










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