higurashi
□泣崩し編
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ねぇ 夢でも 現実でも
あなたがいればいいなんて
おかしいかしら?
泣崩し編
こんなにも空が青いと、今日はいいことが起こるだなんて想像してた。
*
悟史君がいた。一年前、どこかへ行ってしまった悟史君が・・・私の目の前に居る。
こんな残酷な夢は無い。彼はいままさに、私にキスを迫っていた。
「え!?ちょっと!」
夢だとわかっていても、拒むことなんか出来なかった。振り払えば 振り切れば 頬をつねれば現実に帰れる・・・。でもそうしたくないのが本音だった。
懐かしい味がした。懐かしい温度がした。
懐かしさは唇を伝って、ゆっくり心に溶け込んでいく。
夢ではない。現実なのだろうか。こんなリアリティあふれる夢でいいのだろうか?
「詩音」
唇を離した瞬間、彼は私の名前と丁寧に呼んだ。一文字一文字壊さないよう・・。そんな目は曇っているような気もしたけど、すぐまた笑みに変わる。
あなたは・・・何をしたいんだろう・・・
「悟史君。」
「元気?詩音。」
「元気だと思いますか?」
「詩音は顔に出るからね、元気なことぐらいわかるさ」
そうだ。私は
「ふふふ、元気よ」
悟史君は、私の全体を一往復して、なにか変わってないか確かめているような使いをした。
(・・・・夢なんでしょうね)
背景は学校の廊下。掲示物は、彼が失踪する前のものであった。
「・・・悟史君。これは夢なんですか?」
「詩音が夢と思うなら夢だと思う。」
「あなたは、悟史君ですよね?」
「そう思うよ、僕自身自分がわからないんだ。」
彼は、うつむいた。
「なんで・・私の夢の中に来たのですか?」
「会いたかったから」
「嘘ですね。」
「なんで?」
「一年もほったらかしにしてるからですよ」
「ははは、それもそうだね」
そういうと、軽く頭をかいて苦笑する。
笑ってない、ひきつっている。
「でも、会いたかったから」
・・ほかに理由があるんだろう。
「嘘です」
彼は、白い肌をすこし赤く染めていた。
照れている?
「詩音にさ、渡したいものがあったんだ。でもね、僕は詩音にいつ会えるかわからないから。」
ごそごそと、ポケットをいらっている。堅く固形なものがはいっているようだ。
『プレゼント・・』
・・・声がかすんでいく。
「悟史・・君・・・」
『もう、さよなら』
「またあってくれますよね?」
『わからない。もう無理かもしれない。』
「そんな・・」
『詩音・・元気?』
彼は少しずつ透けていく手で、私の頬をつたう涙を拭うと、またキスをする。
これが最後かのような、そんな寂しくて・・冷たい・・キス。
「・・・元気・・ですよ・・」
*