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□01. 計略か必然か?
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また会えるよね…

言葉には出さないけれど
そんな思いが伝わる様に彼女は彼の裾を掴む
そんな彼女の頭をポンポンと2回軽く叩くと

生涯の別れってわけでもないだろ?

と言い彼女を優しく見つめ少し悲しそうな笑顔を見せ じゃあな の一言で去って行った。



「覗き見とは…感心出来ませんね」
「そういうあんたもそうだろ」

少し離れた小さな社でヒノエは望美と将臣のやり取りを黙って見ていた。
広大な熊野もヒノエにとっては庭当然
だからこの中々人目に付かない社を知ってても当たり前だ

「なんであんたが此処を知ってるのさ」
「さぁ…どうしてでしょうね?」

細い笑みを浮かべ知らない振りをする叔父を食えない奴と何回思った事だろう

「ヒノエは彼についてどう思いますか?」

確証があるわけではない。
だが、将臣のあの顔・服装は何処かで見た事がある

「鴉を飛ばしますか?」

もし、あいつが敵だったら月の姫君は泣いてしまうだろうか
だけどいつかはわかってしまう事
熊野に協力を仰ぐなら必ずわかる事だろう
熊野は負けるわけにはいかないから
今鴉を飛ばさなかったとしても
負けないために俺はいつか鴉を飛ばすのだから…
そう思い立ち小さく口笛を吹く

「お呼びでしょうか?」
「あいつをつけてくれるかい」

鴉はヒノエの顔を見ると何も言わず将臣の後を追った

「彼が黒だったらどうするんですか?」
「どうもする気もないね。この先の戦で当たらなければそれに越したことは無いだけさ」

ヒノエの答えに弁慶はくすりと笑い

お手並み拝見ですね

と言うと弁慶は社を後にし宿へ足を向け
ヒノエも宿へと続く道を歩く

「少し…姫君に顔を合わせ辛いかな」

女の行動を無断で跡を付け覗き見したのだ
気持ちの良いモノではないのは当然だ

少しでも気が晴れれば…と思い熊野の深い緑の中を様子を見ながら歩く。
こんな時は女を抱くのが一番良いんだろう
だがそんな気にもなれない

久々の熊野。別当としても熊野の様子は気になる所だし都合は悪くないと思いつつ
市への小道を歩いていると聞きなれた透明な声が聞こてきた

「あ…れ?ヒノエ君…?」
「…こんな所でどうしたんだい」
「ぁ…うん…。ちょっと散歩でもしようかなって思って」
「ふぅん…。…姫君さえ良ければ市まで歩いてみないかい?」

望美はヒノエの誘いに少し考えその後少し赤くなった目で笑顔で答えた
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