裏novel

□時に妖花は無垢を纏いて
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『ローサ…その唄、何処で聞いてきたの?』

『町の教会!礼拝が終わったあと、男の子たちが歌ってたんだあ』

『…そう。でもその唄を歌うのは、もう止しなさい』

『なんで?』

『ローサ。今から私たちが住む村は、此処とは違って国境の近くにあるの。何かの拍子で向こうの国の兵隊さんに聞かれちゃうかもしれないわ』

『ザークランドの兵隊さん?』

『そうよ。怒られたら恐いでしょう?だから忘れて、ね?』

『うん!分かったよ、お母さん!』

『いい子ね、ローサ。私の愛しい子――』







「――ん…」

眩しい陽射し。鳥の囀り。

いつもと同じ、爽やかな朝の訪れだ。

眠い気持ちを抑えて背伸びをすると、身体を起こし身支度を整える。

ウェーブがかったくすんだブロンドの髪を高い位置で纏め、バスケットを手に持つ。

そして扉を開ると、外の光へ飛び込んだ。


「おはよう、おばさん。もうパンは焼けてる?」

自宅から歩いて5分程の家の横に回り窓から顔を出す。

すると今まで黙々と作業をしていた女性が、顔を上げてこちらを向いた。


「お早う、ローサ。パンなら丁度さっき焼けたところだよ」
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