□義弟
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10.10/16一部修正
【義弟】
★★土沖←山/裏あり/昼ドラ系(お家騒動&学園)

 





「まただな」

「ええ」

男は開け放った窓から階下を見下ろしていた。

新緑の美しい中庭には
見知った少年が大の字で転がっている。

見下ろす男の名は土方十四郎。

国内でも最高峰の名門と名高い学園で

生徒達はおろか教師達すら頭があがらない
絶対の権力をもつ男。

家柄、容姿、成績すべてが秀でているというだけでは無く、自身に従わない者に対し執拗なまでの制裁を加えるこでも有名である。

そして、土方の視線の先で芝生に転がる少年は沖田総悟。

入学当時から不登校や喧嘩を繰り返す問題児でありながら、学内を牛耳る"土方派"の幹部の一人でもある少年。

これまで土方の意に添わない相手がことごとく消えていったのも
この沖田の仕業である。

今では土方の片腕とも呼べる地位を獲得している。
 
その沖田が、
もう一月もの間、土方の定めた会合に顔を出していない。

「手荒になっても構わねェ、連れてこい」

当然の命令。

普通ならば、半殺しでは済まない。

「わかりました」

世話係の山崎は頷くと、露になっていた尻をしまう。
ついさっきまで、土方の性欲処理の相手をしていたのだ。
ここは、一般生徒はその存在すら知りはしない土方の遊戯室。

下で暢気に寝こけている沖田もそれはよく知っているはずだが。

何を考えているのか。

土方家に仕えはじめてまだ間もない山崎には、
沖田が何者であるのかわからない。


ただ、わかるのは


「土方ってヒト居る?」


遊戯室と廊下を隔てる曇りガラスの向こうに立つ影。

「誰だ?」

「沖田から伝言だ。"土方には飽きた"だってよ」


沖田がどうやら

尋常では無い人物らしいというコトだけ



「高杉を呼べ。薬漬けにして捨てろ」

「了解しました」

金で雇われたという伝言者は両目を焼かれ、顎を割られた。
今は気を失っているが、意識が戻れば待っているのは生き地獄だ。

(なかなか綺麗な奴だったのに、跡形も無‥)

「ああ、ついでに去勢もしとけ。総悟に挿れたかも知れねェからな」

「は、はい」

(狂ってる)

土方はもう山崎のことも、憐れな伝言者のことも見てはいない。
何事もなかったかのように窓辺に立ち、表情の無い冴えた横顔で中庭を見下ろしている。


欲を帯びた瞳は、ただ沖田の姿だけを映していた。

 
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