□目撃
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【目撃】



俺は見てしまった


「あーあ、死んだんじゃねぇ?そいつ」

偶然に目についた
路地裏には

同じ学校の奴等

倒れた少年

そして
どろりと地面に拡がった大量の血

ヒトがあんなに血を流して大丈夫な訳がない

背筋の凍る、量

「おいどーすんの?やべぇよ」
「チッ‥てめぇのせいだぜ銀時」
「なにいっちゃってんの、こーゆのは連帯責任‥」

目が合った

見開かれた瞳孔

一斉に振り返る視線

気がつけば

走りだしていた

赤信号の道路を全力で走り抜けて

あの場所から徒歩5分ほどの家に駆け込み

玄関に鍵をかけ

靴のまま自室のベットに飛び込んで枕に顔を埋めた

カチカチと時計の音が響く

見た‥

ミタ‥

5人?いや6人?

坂田、高杉
後の奴は名前は知らないが

みんな同じ学年の‥あ

まずい

同じクラスの
坂田には家を知られて‥

ガタンッ

裏口の方から音がする

母さん‥?

違う

今日は夜まで誰も

キィ‥

ドアの開く音がする

ああそうだ

今朝野良猫に餌やって‥そのまま鍵開けっぱで

いやでも
嘘だろ?
不法侵入じゃねーか

ギシッギシッ

足音は迷いも無くこの部屋に向かって来る

俺はガバリと起き上がり身構えた

クソ!

こうなったら

いや無理だ、一人じゃねーし!

俺は握りかけたバットを捨て

二階の窓から素足のまま飛び降りて、ざらざらするコンクリートの上を走った

交番?

遠すぎる

クソ、携帯は部屋だ

じゃあ近藤さん家‥まだ遠い

近いのは土方の家だ!

ドンッ
 
グルグル考えながら走っていたせいで、目の前の人影にぶつかってしまった。

だが調度いい

この人に携帯を借りて警察に‥!

あと救急車

そーだ、何してんだ俺

もしかしたら路地のアイツ、まだ助かるかも知れねぇじゃねーか!

「悪ぃ、アンタちょっと!」
「そーご?」
「!!‥神威」

ぶつかったのは、コンビニ袋片手に呑気な顔したクラスメートだった

「どしたの?なにソレ?」

神威は俺の素足を指して眉を寄せた

ガラスとか小石とかでボロボロになっちまってる足

どう見てもただごとじゃない

だが

「面白そうだね?通り魔?強盗?それとも‥今日は13日の金曜だからジェイソンかな」

神威は本気で面白がっている

「アンタはいつでも暇そうでいいな」

コイツからは

離れないと

噂では神威は中国マフィア、春雨の一員で

クラスでは坂田と親しい

こういう非常時に‥

坂田が真っ先に頼るだろう相手

第一

俺との仲は


悪い


「助けてやろうか?」

「は?」

「追われてるんだろ?ほらこっち、来いよ」

「ちょ‥オイ」
 
嫌がる俺を神威は強引に引きずって歩き出す

ヤ‥ヤバイ。一番ヤバイパターンだコレ

100パーセント悪い結末しか見えねェ

「触んじゃねーよ」

「まあ任せとけよ。礼なら舎弟に入るくらいでいいからさ」

「冗談じゃねぇ。どんな緊急時だろーが、テメーにだきゃ頼らねーよ」

「総悟、聞き分けないと殺しちゃうぞ?」

ひやりと空気が凍り付いた

赤信号の横断歩道はもう目の前

嫌な汗が背筋を流れた

「実は俺がジェイソンだった、なんて嫌だろ?」

「な‥テメ」

大型のトラックが土煙をあげて目の前を通り過ぎて行く

ドクリと心臓が鳴る

「今なら味方にできるかもよ?」

「そりゃ‥どーゆう風の吹きまわしだィ?」

「オマエについた方が楽しそうじゃないか。俺に声かかってるってことは、アイツ等それなりに本気みたいだしね」

「テメーなんざ信用できっか」

「そう言うなよ。もうわかってると思うけど‥俺が向こうについたらゲームオーバー、だろ?」

掴まれたままの腕がみしりと痛む

「‥‥」

「俺は引き抜いておいた方が利口だよ、総悟」

 
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