□檻
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コンコンッ


「失礼しますよ土方さん」

「来たか」


俺が育ったのは

刑務所のような高い囲いと、
重い鉄の門に閉ざされた巨大な養護施設


門の外にある赤ちゃんポストに捨てられていた

生後何ヶ月かもわからない赤ん坊は、捨てられたその日が誕生日になった


もの心がついた頃には生活のすべてが窮屈な“規則”の中

自由の化身ともいえるガキ供にとっては地獄のような環境だった


門の外に出ることは許されず、
毎日が定められた流れを繰り返すだけの日々

だからといって、
TVの中にでてくる“造られた自由”なんかに憧れはしなかった


ただ、
外に出れば今よりはもう少しマシな飯が食えるはずだと、
それだけを切望していた


「そこに寝て尻あげてろ」

「え?」


13の誕生日に施設を出てはじめて目にしたのは、
巨大な外壁に囲まれた街と
天から見下ろすようにそびえたつ鉄門

街一つがマフィアの縄張りで、
街の子供達は産まれたその瞬間から組員に登録されていた


必死に人生の選択肢を探した


施設の子供は登録なんざされていない


希望はあるか?


マフィアは嫌だ
また管理の中だ


街を出て行けばいい?

だが、
街を出るには関所に払う大金が必要


結局AもBもない。ファミリーに入るしかなかった
(そうしなければ就職口等一つもないのだ)


「ア"ァ"ひぁっ‥アッ!や、ひ‥かたさっ‥ぅあっ‥俺、ノンケだってぇ!」
「俺だってそうだけどよ。テメーの尻の形は好きなんだよ」


組に入れば、汚れ仕事にまわされた

人を殺した

だが、驚いたことに俺はそれが嫌ではなかった
(楽しかった訳でもなく、何も感じなかったのだ)


気がつけば街中に名が知れ渡る程の腕前になっていた


銃口の向こうで瞼を閉じた男に、
人を傷つけて何とも思わないのか?と問われれば


そうだと思った


思えば、施設に居た頃から好き嫌いをつけられるほど
執着できる相手はいなかったのだ


不思議なほどスムーズに出世が続いた

面がウケてボスの側近にもなれた


だが、それは不運だった


側近としての主な仕事はボスの遊び相手

机の下でボスのモノをしゃぶりながら世間話に興じた
 
所詮は余興

本番はない


それでも、
5人の美女と付き合っているプレイボーイである俺が

仲間達の居る前でボスのモノをしゃぶるというのは

我慢の限界なんざ軽く越える範囲の屈辱


苛立ちを隠せずにいれば、いい眼だと好きもののボスを喜ばせた



一年もすればボスに飽きられ、役割が変わった

若(ボスの息子)のボディーガードにまわされたのだ


「なに、馬鹿言ってんでぃ!…抜い‥うぁあっ‥も、抜いてくだせぇ!」

「っ出すぞ」

「え‥な‥?ちょ、やめっ‥!!!」

「く、‥‥ッーー…!」

「んんっ!ンアッ‥奥、来る‥っ!」


人を殺せたところで所詮はただの青臭いガキ

抱かれた程度で泣き言を言ってちゃ、街角の娼婦達のいい笑い者

直腸の奥から逆流して来る若の精液を重ねたティッシュで拭いながら、
俺は薄く笑みを浮かべた


「困りますぜ、土方さん。腰が抜けちゃ仕事に響く」

「よかったか?」

「いい訳ないでしょ」

「総悟、マジに聞いてんだよ」

「痛さ3割、他7割」

「そうかよ‥まあまあだな。また相手しろ」

「わがままなお人だなァ。こう見えても俺は暇じゃァねーんですが」
 
「‥総悟、俺の言うことはもーちょい素直に聞いた方が身の為だぜ?」


数日後、俺は若の愛人として囲われることになった

仕事を理由に若との行為を断わり続けた結果だ


厳しい見張り


自由なんざ全くない
恋人達に逢うことも許されない

鉄格子のついた窓から外を眺める退屈な日々


結局
施設と言う名の檻の外にあったのはまた檻


驚きはしなかった

ただ


日を追うごとに二重三重と厚みを増して行く檻に手をかけて



絶望をしただけ



‐END‐
続きそうで続かない感じ。





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