りとる らばーず
□ハロウィン
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「とりーとりーでお菓子なのです」
「───はい?」
季節は秋。
天高く馬肥ゆる秋。
小動物は寒さに備えて脂肪をつけるのか、ねこも例外なくふっくらとしてきたんだけど。
「はろいんなのです。ご主人たま、お菓子でいたずらなのですよ」
「ああ、なるほど!」
ねこ小人の解説に頷く俺。
今日はハロウィン。
そういや、そんな行事あったよね。
よく見てみたら、ねこは紫のラインにリボンの付いた黒の衣装に帽子。
その隣に居る遊びに来た友達のうさぎ小人のひめちゃんは、オレンジのラインにリボンの付いた黒の衣装に帽子。
「鳥喰うか鳥〜☆ でお菓子ですっ♪」
ひめちゃんの言葉に思わず微笑。
「Trick or Treatね。ところで、その服はどうしたの? 可愛いね」
どう見てもお揃いの衣装。
ひめちゃんに会うのは今日が初めてなワケだし、他のメンバーが彼女を知っているはずもない。
となれば、ねこのサイズにピッタリなこの衣装は誰かのプレゼントなのだろう。
「ジロたまの手作りなのです。ねこのお洋服は全部ジロたまの手作りって言ってました」
「ええっ!? ジロウっ!!!?」
まさかの人物の名前に思わず声が上がってしまう。
裁縫が得意だなんて聞いたことがない。
裏リーダーだから出来る技なのか。
「ひめのご主人様のお友達です♪ クリーニング屋さんの息子は何でも出来るのです☆」
なるほど、ジロウさん違いね。
ひめちゃんのご主人様はご近所の中学生らしい。
となればこの服を作ったのも同級生の友達なのか。
最近の中学生ってば凄いのね。
妙に感心しながら頷くと、キラキラとした眼差しでお菓子を待つ小さな子たちと目が合う。
「ああ、お菓子だったね」
あったかな?
クスクスと笑みながらキッチンに移動。
彼女たちから贈られる悪戯もどんなものか気になってしまうけれど。
あんなにキラキラした目でお菓子を期待されてしまったら裏切れないじゃないか。
フレークにヨーグルトにチョコにアイスにクッキー。
折角だから全てをあげようか。
グラスに盛り付け、小人サイズのパフェを二つ。
二人から返ってくるのは極上の笑顔。
「きゃ〜、パフェです♪ ありがとうございます!」
「ぱへ、ぱへ〜。ご主人たま、ありがとうございます」
そして可愛らしい頬へのキスが二人分。
「お菓子くれたら悪戯なのですよ♪」
「ほっぺにチューでいたずらです」
思わぬ不意打ち。
それはお礼なんじゃ、なーんて言葉は出てこない。
温かくなる胸の内に幸せが溢れる。
「ありがと」
その笑顔だけで仕事の疲れなんかフッ飛んでしまう。
ハッピーハロウィン。
お菓子の甘さよりも甘い君たちの笑顔。
これからもこんな日が続けばいいね。
20091031