ぽかぽかと暖かく、のんびりとした時間を過ごしていた本日。
今日は友達が来るからと朝からワクワクしていたひめが、時間がきたらしくパタパタと来客用の門の所まで走って行った。
学園の人間が来るのであれば、ひめはそう言うだろうが、言わないところを見るとそうではないらしい。
近所で知り合った子供でも呼んだのだろうか。
だったら、子供は子供同士で遊ばせておけばいい訳で、俺がこの場に居る必要も特にない訳だが。
「ご主人様〜♪ お友達のねこちゃんです」
猫───?
連れられてきたひめの友達とやらを見て、俺は暫く言葉を失っていた。
「ひめたまのご主人たま、はじめましてです」
りとる らばーず
「あー、跡部ん家に遊びに来てるんだ? じゃあ俺、今から行くー! 実はまだ会ったことないんだよね」
ねこと紹介された猫耳姿の小さな女の子を目の前にした俺は、彼女の身につけている服を見てすぐにジローに電話していた。
この手の服を作るような人間など、母親を除いては一人しか知らない。
クリーニング屋の息子である芥川慈郎、こいつだった。
「それでですね、ねこは無事にご主人たま見つかったから、ちゃんとお家があるのですよ」
ほわわんと話す猫耳の小人に。
「よかったです〜。ふぉくしーちゃんもルウくんも、ちゃんと新しいご主人様の所で楽しそうなのです☆」
ニコニコと話すうさぎ耳の小人。
聞けばうさぎ以外にも色々と小人たちは居るらしい。
そんなの、聞いたことねぇぞ。
「へぇー。でも俺ん所に小人用の服作ってって来たの、ねこちゃん所のバンドの兄ちゃんだけだから他は知らないなぁ」
「そうそこらに小人だらけだったら、今頃色々騒がれてるだろうよ」
ジローの言葉にこう返し、幾分かまだひめよりも小さいねこを見た。
彼女たちは風を使ってお互いのことを報告しあっていたみたいだ。
あ、だから風の便り───?
それは違うか………。
空の上には小人たちの世界があるらしく、時々風に乗って俺達の所に来るらしい。
変わった世界もあるもんだと、変わった世界に居る俺が言う話じゃねぇが、そう思った。
「勝負です、ねこちゃん! お子様ランチの旗を倒して食べたら負けなのですっ♪」
「むむっ、負けませんっ!」
出されたお子様ランチと格闘する小さな彼女たちを見ながら、新たな世界を実感しながら穏やかな風を楽しんだ、ある日の午後。
「ていうか跡部、旗倒さずにどうやって食べんのかな?」
「───さぁな…」