展示用
□丑三つ時
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武巳は読んでいた本を枕元に置き、隣のベッドに視線をやる。
あそこで沖本が眠らなくなって、半年以上経つ。彼とは2年近く同居していたと言うのに、彼がいない現状に慣れた自分がいた。
彼を失った原因は、他でもない武巳だ。そして、沖本自身も。
誰かを恨んだり憎んだりする事はしなかったし、それぞれの行いを責めたりもしなかった。
だって、一緒だ。
守りたい人と、ずっと共に在りたかっただけ。
「…………。」
本の下敷きになっていた携帯電話を取り、開いてすぐ閉じる。
丑三つ時が何時か結局調べていないし、訊く宛ても随分前に失くしたから、今がそれなのかは分からない。
キチンと整えられたベッドを見つめ、そんな事を考えていた。
―――コンコン、
深夜の集合住宅にふさわしい度合いでノックされた窓に、武巳は一声掛ける。
「空いてるよ。」
するとこれまた慎重に窓がスライドして、まずブレザーがはみ出した鞄が投げ込まれた。
「いつもすいません、センパイ。」
短めの髪を逆立てたスポーツマン風の少年は、今期からルームメイトになった1年生だ。
部活に実家暮らしの奴がいるとかで、ゲームやら何やらでついつい盛り上がってしまい、今日のように門限を破る事がたまにある。