展示用

□地下室
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 言われるまま席に着いた武巳達に、詠子は嬉しくて仕方無いような弾んだ口調で語った。


「今日はね、私の誕生日なんだよ。」


 だから、この状況は詠子の『願望』であり、神野からのプレゼントなのだと。
「ねぇ神野さん、せっかくだから……」
「何をしている?」
 不意に、決して大きくはないのに威厳を持った声が届いた。
 詠子の輝く瞳が見つめる方向には、先程の神野のように全体の輪郭が景色に溶けた、白い美貌の少年が居た。
「へ、陛下!? 何でここに!?」
「ゴミ袋を見付けたから渡しに来た。」
「……ああ、本気でわたし達に掃除させるつもりだったんだ……。」
 羽間市指定ゴミ袋だけで、掃除用具を持ってきていないところが空目らしい……か?
 似つかわしくない日用品を携えた彼は、詠子に対して初めの問いを繰り返した。
「それで、一体何をしている?」
「誕生祝いだよ。」
「何故ここなんだ?」
「みんなが来てくれるためじゃないかな。」
「……。」
 細めた目で神野を捉える。あれだけの問答で大体把握したらしい。
「……好きにしろ。」
 と、空目は詠子にゴミ袋を渡した。
 後片付け――を兼ねた掃除――をして帰れという事か。
「あれ、行っちゃうの?“影”君。」
「残る理由は無い。」
「うーん……。」
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