展示用
□地下室
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オープンカフェにあるような白い丸テーブルと、揃いの椅子が2脚並べられていた。
暗闇に突如現れた異物に困惑し、武巳達は顔を見合わせる。
と―――
「あれ? “追憶者”君に“優しい鏡”さん。」
反射的に振り返った先では、その呼称を使う唯一の人物が無邪気に笑っていた。
「十叶、先輩……!?」
「それに“神隠し”さんまで。こんな所で会うなんて驚いたよ。」
ちっとも驚いていなそうな柔らかい物言いの詠子とは対照的に、武巳達は動揺を抑えられなかった。
「な、何であんたがこんな……だってここ、陛下ん家……!」
すると、詠子はくるりとした大きな目を不思議そうにしばたたいた。
「ここって彼の家なの?」
「えっ……?」
彼女は真実を隠したり分かりにくく表現する事はあるが、決して嘘はつかない。
腕を組んで首をかしげる詠子は、本当に知らなかったのだろう。
しかし、それは疑問の色を深めるだけ。
「じゃ、じゃあ……ホントに何で……?」
空目宅の地下と知っているなら企みでもあるのかとも思えるが、そうでないなら何故。
詠子はしばらく、こんな真剣さは見た事がない程考え込み、やがて閃いたように顔を上げた。
「神野さんだ。」
「は?」
「私にここを紹介したのは、神野さんなの。」
待っていたと言わんばかりに、周囲の闇が密度を増した。