展示用
□招魂術
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「陛下ー、何読んでんの?」
いつもの分厚い黒い本なら、特に気に留めなかった。
しかし今日の一冊はやたら薄い上に、書店の安っぽいカバーがかかっているのだ。明らかに普段とは違う。
あまつ周りに目もくれぬ熱心さで読み込んでいれば、空目ファン1号としては気にならない訳がない。
「……これか?」
問い掛けてから数秒後、ようやく返事。空目がそれ程熱中する本とはどんなものかと、興奮気味に武巳は頷く。
「これは……招魂術の本だ。」
「しょ、しょーこんじゅつ……?」
パッと浮かんだ文字は「商魂」で、絶対に違うと瞬時に否定する。
武巳が戸惑うのを見越してか、空目は問われる前に語り出した。
「魂を招く、と書いて招魂だ。この本には、他人の心を自分の元に引き寄せる儀式などが記述されている。」
「うへー……。」
そんな得体の知れない物を所持しているとは、さすが魔王陛下。
感心した後、武巳はふと気になった。
招魂術の本を熟読しているという事は、つまり空目はそれを実践しようとしているのでは?
すなわち、魂を手中に治めたい人物がいる?
「だ、誰だよ!? 陛下の恨みなんか買った奴!」
すっかり青ざめて詰め寄ると、空目は怪訝そうに首をかしげた。