展示用
□あなたの後ろに
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必死に喉に力を込めて、声を絞り出す。
「あやめ・・・・・・・・・・・・?」
疑問を含んだ問いかけ。
振り向いたら、分かるのに振りむけない。
それは、間違っていた時の為の予防線。
会いたくて、恋しくて、何度も願い欲した相手じゃなかった時の為の自己防衛。
だから、返事を待った。
「はい・・・・・・・・・」
帰って来た肯定の返事が耳に飛び込むのと同時に、振りむいた。
「俊也さん・・・・・・・・・」
涙が流れている彼女の頬に手を伸ばし、軽く触れた。
―触れる・・・・・・・・・・・温かい・・・・・・・・―
幻ではなかった。
夢でもない。
「――――――っ!」
俺の目からも、涙があふれ出す。
止める術を、俺は忘れてしまっていた。
「俊也さん・・・・・・・・・・」
頬に添えた手に、あやめの手が重なる。
「あやめ・・・・・・・・・」
膝を折って、彼女の視線に合せる。
鼻先がくっつくまで顔を近づけて、相手の瞳に自分を映して、額を合わせて、泣いた。
―――――――――また、会えたね。
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