展示用
□あなたの後ろに
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落ち着いて、この後どうなったのかを思い出す。
『んで、パニックになってその人叫んだんだ、『お前、どこにいるんだ!?誰なんだ!!』って。そしたら、こう帰って来たんだ・・・・・・・・・・』
『あなたの後ろに―――――』
『って。んで、大慌てで一目散に逃げたんだって。怖いよな〜!振り向いたら、やっぱりどこかに連れて行かれるのかな?』
完璧に思いだした。
足音が聞こえる気配はない。
一、二度考えてから、覚悟を決めた。
「どこにいるんだ?」
そう問いかけた。
足に力を込めて、何があっても良いようにしておく。
電話の向こうで、息をのむ音がした気がした。
何か驚くような事を言っただろうか?
少し待ったが、返事は返ってこない。
だが、電話はつながったまま。
緊張で乾いた喉を叱咤して、もう一度尋ねる。
「お前は、どこにいるんだ?」
また少し沈黙が下りた。
もう一度問いかけようとした時、微かな声が聞こえた。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・に・・・・・・・・・』
小さな、すぐに消えてしまいそうな、儚い声だった。
「何だ?」
聞き返した。
耳に全意識を集中させる。
また、あの声が耳に飛び込んできた。
少女の声だった。
「『あなたの後ろに・・・・・・・・・・・』」
電話の向こうと背後からと。
同時に聞こえてきた声に、俺は思わず電話を落とした。
「あっ!」
慌てる声と、拾う気配がする。
だが、振りむけないでいた。
頭に浮かんだ可能性を、なかなか認められずにいる。
―まさか、本当に!?―
何か声を出そうと、必死になる。
だけど、胸がつまって、頭が混乱して、唇が震えて動かないから、なかなか言えない。
「ぁ・・・・・・・・・・・・・」
小さな声が出た。
反応する気配がした。
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