展示用
□あなたの後ろに
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―なるほどな・・・・・・・・・―
確かに『ある筈のない電話番号』である。
少し迷ってから、通話ボタンを押して耳に押し当てる。
『その電話に出ると、全く声が聞こえないんだ。んで、何回も「誰ですか?」って尋ねるんだけど、返事無し。で、気味が悪くなって電話を切ろうとしたんだ。そしたら、聞こえてきたんだよ、さっき超えた踏切の音が。』
何も言わずに意識を集中させると、かすかに音が聞こえてきた。
先ほど渡った信号で流れていた音楽だ。
―本当だったんだな・・・・・・・・・―
早まる鼓動を押さえつけて、じっと聞く。
『まぁ、踏切なんてたくさんある。と思っていたら、先ほど通った時に聞こえた、選挙カーのアナウンスも聞こえてきた。他にも、自分が通り過ぎた道にある音が聞こえてくる。後をつけているかのように・・・・・・・・・』
道端で演奏されていた楽器の音色。
通る度に吠えてくれる犬の鳴き声。
踏切が下りるのを知らせてくれる音。
そこまで聞いて、意識を背中に集中させた。
踏切を通ったのは本当についさっきの事だから。
『で、切ろうとしたんだよ、本当に。そしたら、自分じゃない足音が聞こえてきて、人の気配もかすかにするんだ。』
コツ コツ コツ
ヒタ ヒタ ヒタ
自分を追いかけるように間をあけてついてくる足音。
確定した。
まずい事に、近道をと思って人が全くいない裏道を通っている。
外套も少なく、今ある場所を過ぎたら先の方にしかない。
思わず、足を止めた。
光の中に入ってこられない気がしたからだ。
案の定、足音も止まった。
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