展示用
□丑三つ時
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草木も眠る丑三つ時と呼ばれるのが何時頃か正確には知らないが、とにかく遅い時間だろうと認識していた。
少なくとも、翌日1限から授業のある人間が起きている時間でない事は明白だ。
1限の英語の宿題だけはきちんと済ませ、午後の古典は誰かに見せてもらおうと、安心して夢より深いところをたゆたっていた。
なのに、
「とぅわーけみぃー!!」
裏返った明るい奇声に幻想を割られ、武巳はビクリと痙攣して目を覚ました。
絶叫はバンバンと物騒な効果音付きで主張を続けるので、考えるより先に叩かれまくる窓を引き開けた。
「たらいまぁ〜。」
「酒くさっ!」
咄嗟に身を引いた武巳に、門限破り及び法律違反者は高笑いしながら抱き着いた。
加減の無い酔っ払いの体重を支え切る事ができず、二人して部屋の中に倒れ込む。
「って〜!」
「あははははは!」
「笑うな!」
武巳の制止など聞こえていないように、沖本はゴロリと床に転がる。
門限破り常習犯ではあるが、酔って帰ってきたのは初めてだ。いつものごとくデートかと思っていたが、違ったのだろうか。
「武巳はいいなあ。奈々美さんとは大違いら。」
にへらにへらと笑う口から出た名前に、なんとなく事情を察した武巳はげんなりした。
これは、朝まで離してもらえないパターンだ。