展示用
□死者からの手紙
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武巳は時々、死者からの手紙を受け取る。
授業終了後、サイレントマナーモードに設定してある携帯を開く。画面中央に、メールが届いているとの知らせ。
前の休み時間にもチェックしたので、授業中に着信した事になる。
しかも、同じ学校に通っている生徒から。完全単位制である聖学付属なら有り得る現象だが、こちらが授業中という気遣いは……期待しても無駄だろう。
何せ、送信相手は授業を受けているかも怪しいのだから。
「武巳クン?」
携帯を見つめて嘆息した武巳を、稜子が心配そうに覗き込む。
嘘が苦手なくせに作り笑いで取り繕い、適当な事を言って教室を抜け出した。
――ああ、今日も昼飯食いっぱぐれる。
やる気の無い小走りをしながら、また深く息を吐いた。
* * *
敷地内に点在するベンチより待ち合わせに適したそれは、利用者がほとんどいない。
今も、煉瓦造りの校舎の雰囲気を損なわない洒落た東屋でくつろぐのは、制服を着た小柄な少女だけだ。
「……遅いぞ、小僧。」
武巳にとって後輩にあたる少女は、おとなしそうな外見からは想像もできない声音と表情で振り返った。