小説

□釣り人はかく語る3
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 ぐるぐるする。
 なんでこんなに貴方に執着してしまうのか。
 考えてたの。
 そしてわかったの。
 貴方は。



『釣り人はかく語る3』




 部屋で二人きり。
 これ見よがしにベタリとくっつく。
 貴方は嫌がりもせずに「役得♪」と笑う。

 笑うの。
 私が貴方で遊びたいのに、まるで私が貴方で遊ばれているみたいなの。
 嫌だわ。

「何膨れてるの?」
「…なんか、私だけ振り回されてるみたいで嫌」

 先に釣ったのは私。
 貴方は釣られた魚。
 そのはずなのに。

「いや、俺、七海さんに振り回されてるし」
「嘘」
「嘘じゃないって。今もドキドキしてる」

 でもそれは生理現象。
 女の子と二人きりでドキドキしない男は少ない。
 ましてや一人暮らしの男の部屋に警戒心なく一人で遊びに来てるのだから。
 期待しない方も、おかしい。
 手を出そうとしないのも。
 …私の偏見かしら?

「ねぇ、私のこと好き?」
「もちろん好きだよ」
「彼女より?」

 驚きで目を丸くしてこっちを見る。
 どうなのよ、と腕に抱き付いて見上げる。
 もちろん胸はないなりに押し付ける。
 誘ってるのよ。
 頑張って可愛く見えるようにしてるのよ。

 ねぇ、釣られてよ。

「何それ」

 あ、笑った。

「ヤキモチみたい」
「悪い?」
「いや、嬉しいけど…」

 複雑な表情。
 わかってる。
 困ってるのが見たかっただけよ。

「たぶん、私、白石くんの事、好き」
「ありがとう」
「そうすれば全てに説明がつく」

 首に腕を回して顔を近付ける。
 逃げない彼の顔にはさっきと同じ『役得』の文字。

 違う。
 違うのよ。

 きゅん、と胸が痛む。
 私は本気で言ってるのよ。
 貴方はまた戯れと思ってるんでしょうけど。

「手に入らないものほど欲しくなるでしょう?」
「なるほどね。釣られても俺が落ちないから欲しい、と」
「釣り人が魚に釣られた気分だわ」
「あんまり言うと本気になるよ?」
「本気になってくれないと満たされない」

 本気になって困るのは、お互いの真実だけれども。
 でも私、わがままなの。
 全部欲しいの。

 だから。

「好き」

 言って口付ける。
 返事は聞かない。
 言わせない。

 それが最後の私の良心。




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