車輪小説
□じこあい〜ジョルジ編〜
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ボクは再びダルタニア邸を訪れた。
さっき渡されたばかりの、エキナシア家に伝わる秘薬とやらが、何の効果も及ぼさなかったからだ。
まあ、普段は自分で試したりなんてしないけど、あれは事故だったし…。
とにかく文句の一つでも言わなきゃ気が済まない!!
「ダルタニア!!」
扉を開け放ち、最強メイド軍団がまだいる所から、エキナシアがまだ帰ってなくて、応接間にいるんだろうと察知して進む。
応接間に着けば、そこには思った通り、ダルタニアとエキナシアがいた。
「おや、どうしたんだい?」
「どうしたもこうしたもない! さっきの秘薬! 何の効果もないじゃないか!!」
不思議そうに見てくるダルタニアにイライラしながらテーブルを叩く。
困ったような顔をしてエキナシアを見るダルタニア。
エキナシアはその視線を受けて、ティーカップを置き、足を組み替えた。
「効果がないというのは、何かに使ったのか?」
「…アンジェリカが瓶を割ってしまって、秘薬を被ったんだよ」
つまりは自らの不注意と言うのが悔しかったけれど仕方ない。効果もわからないものを試しもせずに使ったと思われるよりマシだ。
それを聞くと、エキナシアは軽く溜め息をついて言った。
「なら早く帰って彼女にシャワーを浴びせるべきだ。誰かと遭遇する前にな」
「ボクが聞きたいのは、なんで効果がないのか、って事なんだけど!」
「だから効果が出る前に薬を流せと…」
詰め寄って尋ねるボクに呆れ顔で言ったエキナシアは、ふとボクの後方に目をやると、「ふむ」と頷いて、また違う事を返して来た。
「もしかしてお前もあの薬を被ったのか?」
「え? あぁ、そうだけど…そんな事よ…りっ!?」
何故そんな事を聞かれるのかと不思議に思うも、なかなか答えてくれないエキナシアに更に詰め寄ろうとした時、急に後ろから肩を掴まれ振り向かされた。
何するんだよ、と言おうとしたら、そのままぐいっと引っ張られ唇を塞がれていて、声にならなかった。
しかも、そのボクの唇は、相手の唇で塞がれている。
いわゆるキス。
ボクは頭が真っ白になって固まってしまった。